-書くこと
正月は毎年テレビばかり見ていて、目が痛いです。 ただ普段全く見ないので発見はいろいろあります。NHKの「100分de名著」だったか、 萩尾望都の特集を見ました。 『銀の三角』と『11人いる!』は何度も読んでいて、 でも『ポーの一族』はちらりと読んでよく…
今年ははちまんさんへ登ってきました。去年は面倒くさがって行かなかった気がするんですが、 それまで毎年行っていた元日の初詣を再開したという感じです。年の変わり目に間に合わせる気もなく、 新年10分前に家を出たので道中で新年を迎えました。 近くの…
一年を振り返るというとき、 今年は社会的にはコロナ問題で埋め尽くされていましたが、 僕自身はその影響を直接受けたというよりは、 そのニュースに触れて考えさせられることがとても多かった。 だから、書くならそういう話になる。というより、今年書いて…
沈黙を思う。 ひとりの沈黙。 共同的な沈黙。ひとが誰かといる時、 その場に一緒にいることがコミュニケーションとなる。 何かを伝えあい、なにかが通じあう。 意図から外れて、意図をすり抜けて。 沈黙は二人のかたわらにつねにある。雄弁の沈黙、無口の沈…
スニーカー刑事は立ち回る。 事件は人心の闇への招待状。 参加は強制の呪われた祝宴。 死の足跡をたどる即席の詩。 生の所業は諸行無常への道。 手応えはたしかに存在する。 闇を照らせば有象が浮かぶ。 光は見えぬ無象を消し去る。 後先はなくただ存在があ…
『生活世界の構造』(アルフレッド・シュッツ)を読んでいます。 隔日数ページずつで、現在500ページ少しまで進んだので、たぶん半年近く読み続けています。生活世界の構造 (ちくま学芸文庫)作者:シュッツ,アルフレッド,ルックマン,トーマス発売日: 2015/11/…
フェンネルは向かいの椅子に向かって話しかける。 「すべての言葉は沈黙に通ずる」 テーブルには彼以外だれも座っていない。 「言葉というか、会話だけども。二人で延々と続けていれば、いずれお互いに言うことがなくなる」 もちろん空間は返事をしない。 「…
アイン・ランドのリバタリアニズムに通ずる記述を見つけました。現代的な個人主義の理解は、この引用に寄せて書けば、 「倫理的最高価値としての自由」が、 「自己以外の存在の変改や抹消を意味」する、 ということになりますが、ほんとうの(発祥としての)…
だいたい、パパがお話をしてくれるのは、寝る前だ。パパはこんな具合に始める。 「さて、もう寝る時間だ。その前に、ひとつ、お話をしよう。ききたいかい?」パパはいった。 パパは、ぼくにお話してくれる前に、かならず「ききたいかい?」という。「どうし…
「どうしたんです?」院長はいった。 「いや」わたしはうろたえていった。 「なにか話したいことがあると思ったんですが。よく考えたら、話すことは別にありませんでした」 それから、また、わたしは黙った。院長もだ。いやはや。たまりかねて、わたしはいっ…
ねえ、クリストファー・ロビン。もういってもいいよね、「疲れた」って。ぼく、ほんとうに疲れたんだ。 世界がこんな風になったのは、向こうの世界で(どんな世界か知らないけれど)、とんでもないことが起こったからだ、というやつがいた。だから、ぼくたち…
× × × 言葉には意味がある。 人は意味を頼って言葉を発する。 時には言葉にない意味を頼って。 意味は根に養分を与える、土のあるところでは。 木は枝を伸ばし葉を拡げる。 葉の重なりは光を遮り陰を生む。 陰に形はなく、形なきところに陰はない。 陰に宿る…
香辛寮の人々 2-5 「シンゾー・エクリチュール」 - human in book bouquet 香辛寮の人々 2-6 (承前) - human in book bouquet 香辛寮の人々 2-7 他責主義の底に潜むもの(承前) - human in book bouquet * * * 「僕はここ最近ずっと、システムについて考…
cheechoff.hatenadiary.jp cheechoff.hatenadiary.jp * * * ヒハツ・コーヒーが入ったカップ2つを手にして、フェンネルがテーブルに戻ってくる。 「この胡椒自体に燻製のような香りがあってね、ドリップ前に粉に足すとコーヒーに深みが増すんだ」 「ふむ。…
cheechoff.hatenadiary.jp * * * カップのコーヒーは空になっていたが、二人とも特に気にするふうでもない。 「君が居心地が悪いと感じたのは、会話はいちおう論理的に整合性がとれているというだけで、言葉のやりとり以外の面でコミュニケーションが成立し…
フェンネルは共同の居間で新聞を読んでいる。両肘をテーブルにつけ、片手にコーヒー。居間には彼しかいない。 業だな、と感じる。昨今のウィルス報道のことだ。 報道はニュースをなんでもかんでも伝えるが、その姿勢はマスコミに必然の他力本願だ。その言葉…
あるいは本題の5倍以上は長いまえおき 理解よりも前、それを目指す考察よりも前の、興味の段階にある状態が、 なにごとかを指し示すことがある。「普遍に至る個性」は、その個性が社会にもまれて生活している限りにおいて、 いわゆる個性的な人物でなくとも…
年の瀬です。今年は、いつもより寒くない気がします。 だからなのか、年末という感じがあまりしません。毎年、年末になると頭の中に流す曲がまた同じように流れて、それで年末だなと感じる。「節目」という感覚が、年々薄れているかもしれません。 年齢のせ…
ビルの隙間から月が見える。 見上げながら一緒に歩く。 自分たちだけが動いているように見える。 自分たちだけが止まっているようにも、見える。 同じことだと思う。 月に時間があるか? 月から時間が生まれるか? 月は定点だと捉える。 自分は月に観測され…
階段を降りる足音が聞こえたあと、ディルウィードが居間に姿を見せる。 彼はソファでコーヒーを飲むフェンネルに目を留め、笑顔になる。「こんにちは、フェンネルさん。いい香りがすると思ったら」 「やあ。君も飲むかい? さっき淹れたところだよ」 「あり…
ティーチャーズを飲むのは今日が初めてだ。 スーパーに置いてあるものでは、シーヴァス・リーガルとジャック・ダニエルが好きだという記憶がある。 ただ、初めてウィスキーを手に取った大学生の頃に飲んだ安酒も、味は覚えている。 今好んで飲む気にはならな…
言葉は「ないものをあらしめる」ために生まれた。 その場にあるもの、そばにいる人を名指す必要は、本来はない。 身振りで伝わるからだ。時間的に、または空間的に、「ある」が「ない」に変わったもの。 あるはずがなくなったもの、あってほしいがないもの。…
→(1) →(2) × × ×「『沈黙に至る雄弁』というものを考えてみたのです」 「ふむ。つい最近どこかで聞いたような表現じゃの」 「……」 「……」「言うことがなくなって黙り込む、ということかな? もうおしまい?」 「いえ、ちょっと一人でデジャビュに浸っており…
→(1) × × ×「『沈黙に至る雄弁』というものを考えてみたのです」 「ほう。どこかで聞いたことのある表現だな。それは具体的には、どういうものかね?」「前に話していたように、言葉がそこには存在していないはずの沈黙という状態を言葉で表現したい、いや、…
(…)しかし、すでにシャトーブリアンがこの加速化の経験を旧秩序の廃墟の抗いようのない徴と見ていたし、[ロバート・]ムージルもまた「加速化主義(accelerisme)」という表現を作っている。アレヴィはその試論をミシュレの引用から始め、ヒロシマのその後…
フェンネルは居間のソファで寛いで本を読んでいる。廊下がゆっくりと鳴る音が聞こえる。フェヌグリークが姿を見せる。 「ここにいたのね、フェンネル。ちょっといいかしら」 「どうぞ」フェンネルは顔を上げて、向かいのソファを手で示す。フェヌグリークは…
「沈黙について語る、にはどうすればいいか、考えているんです」 「それは、沈黙すればいいのではないかな? 文字通り」 「……そうですね」 「……」「いえ、その、言葉にしたいのです」 「沈黙を言葉にする? 沈黙を破って?」 「矛盾して、聞こえますかね」 …
伝記のエクリチュールにおいて、これらの時系列の省略と対比は、ある自己の経験、すなわち不可避なものの経験を通して、自己が自己に決して一致しないということを繰りかえす経験を表わす方法である。もしくは別の言い方で言えば、世界と自己の歴史性の意識…
『血か、死か、無か?』(森博嗣)を読了しました。 Wシリーズ第8作。血か、死か、無か? Is It Blood, Death or Null? (講談社タイガ)作者: 森博嗣出版社/メーカー: 講談社発売日: 2018/02/22メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を見るここへ来て、…
『街場の現代思想』(内田樹)を、学生の頃に好んで読み返していました。 こういう仕事がしたい、という明確な像を持っていなかったし、そもそも仕事に対する強い意志もなかった時期、大学院生の頃でした。こんな極端なニュアンスではなかったと思いますが「…