運転手と王さま
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言葉には意味がある。
人は意味を頼って言葉を発する。
時には言葉にない意味を頼って。
意味は根に養分を与える、土のあるところでは。
木は枝を伸ばし葉を拡げる。
葉の重なりは光を遮り陰を生む。
陰に形はなく、形なきところに陰はない。
陰に宿るもの、形あるものにはないもの。
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人から人へ伝わる、意味のある言葉。
言葉が持つ意味、人が新たに乗せる意味。
言葉には座席があり、意味の乗客は限られる。
乗る意味、降りる意味、乗り続ける意味は運転手。
目の前で出発したバスに乗り遅れる。
意味は泰然とバス停に佇む。
バスはひっきりなしに到着する、座席も空いている。
乗り遅れることに恐怖はない。
バスは道を走行する。
路線図はない、時刻表もない。
運転手はハンドルを握っていない。
自動運転はまだ実現されていない。
荒れた道では靴をはく。
舗装されれば裸足で歩く。
靴と道路は仲が悪い。
こいつがいなければ、とどちらも思っている。
王さまは赤い絨毯の上をゆっくり歩く。
赤い絨毯はくるくると王様の前で解かれていく。
王さまは裸足だ。
服が着られているかは定かでない。
バスが王さまの前で停止する。
乗客はみな降り、王さまが乗り込む。
運転手は変わらない。
バスは赤い絨毯の上を走り出す。
王さまは行き先を告げる。
運転手は首を横に振る。
王さまはハンドルを要求する。
運転手は両手を上げる。
バスは赤い絨毯の先端に乗り上げる。
王さまは赤い絨毯と運転手に警告する。
赤い絨毯はくるくるを止め、運転手は何も言わない。
バスは道なき道を進む。
言葉は意味を背負い続ける。
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