human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

運転手と王さま

 × × ×

 言葉には意味がある。
 人は意味を頼って言葉を発する。
 時には言葉にない意味を頼って。
 意味は根に養分を与える、土のあるところでは。

 木は枝を伸ばし葉を拡げる。
 葉の重なりは光を遮り陰を生む。
 陰に形はなく、形なきところに陰はない。
 陰に宿るもの、形あるものにはないもの。

 × × ×

 人から人へ伝わる、意味のある言葉。
 言葉が持つ意味、人が新たに乗せる意味。
 言葉には座席があり、意味の乗客は限られる。
 乗る意味、降りる意味、乗り続ける意味は運転手。

 目の前で出発したバスに乗り遅れる。
 意味は泰然とバス停に佇む。
 バスはひっきりなしに到着する、座席も空いている。
 乗り遅れることに恐怖はない。

 バスは道を走行する。
 路線図はない、時刻表もない。
 運転手はハンドルを握っていない。
 自動運転はまだ実現されていない。

  荒れた道では靴をはく。
  舗装されれば裸足で歩く。
  靴と道路は仲が悪い。
  こいつがいなければ、とどちらも思っている。

 王さまは赤い絨毯の上をゆっくり歩く。
 赤い絨毯はくるくると王様の前で解かれていく。
 王さまは裸足だ。
 服が着られているかは定かでない。

 バスが王さまの前で停止する。
 乗客はみな降り、王さまが乗り込む。
 運転手は変わらない。
 バスは赤い絨毯の上を走り出す。

 王さまは行き先を告げる。
 運転手は首を横に振る。
 王さまはハンドルを要求する。
 運転手は両手を上げる。

 バスは赤い絨毯の先端に乗り上げる。
 王さまは赤い絨毯と運転手に警告する。
 赤い絨毯はくるくるを止め、運転手は何も言わない。
 バスは道なき道を進む。


 言葉は意味を背負い続ける。

 × × ×