human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

「不安がもはやタブーとならず、公共の問題となった」

価値の領域で、時間地平の「状況の定義」への還元が、包括的な価値変化として観察されたもの──ある部分では、非常に誤解を引き起こしやすい「ポスト唯物論者」というような用語──と一致する。(…)とりわけ、他者あるいはすべてのひとに対する怖れや関心とい…

(SRSその2)境界の盾、浸透の矛

2 自己言及システムには、その基礎的作動に応じて異なるいくつかの類型がある。それは生命(…)、意識、コミュニケーションでありうる。そのような作動を混ぜ合わせることは不可能である。なぜならば、諸作動は閉じたシステムを仮定しているからである。(……

「シミルボン」アカウント作りました。

この一つ前の記事を書評ということにして「本が好き」に投稿し、ようやく100冊目となりました。 前↓に言ってから半月近く経ってしまいました。書評サイトのこと - human in book bouquetなにはともあれ有言実行、 さっそく引越し先の書評サイト「シミルボン…

脳化社会の「もう一つの側面」/ローファイ絶望社会論

『未来を失った社会』(マンフレート・ヴェールケ)を読了しました。原著は96年初版で、統計データなどは古いのですが、語りがいい。 「絶望の舌鋒を振るう社会学者」とのことですが、楽観はもちろんないが、悲観とも違う。 ラジオの天気予報のように淡々と…

googleはググれない

エントロピーの最果ては、ただ一つ。 思考とは、その過程のシントロピー。 エコロジーの問題は、現代文明の自動破壊的傾向と道徳の欠如がことのほかはっきり現れる領域の一つである。それは、言語統制とか抑圧、なだめすかし、居直り、テクノクラシー的対処…

問うて落ち、語りて落ちて、(SRSその1)

論理を整理したいというわけではないのですが… こんにち個人主義を再構築することは、主体なるものの再肯定を意味するものではありえない。われわれは主体に、そのふさわしい継承者、この諸問題に関し、また現代社会の社会構造との関連においても適切な継承…

「我輩は官僚である。名前はもうない」

『未来を失った社会』(マンフレート・ヴェールケ)という本を読んでいます。「社会もいずれは必ず人の一生と同じ経過をたどる」という標語を掲げ、 無秩序の増大であるエントロピー現象が社会のあらゆる領域で起こる様を、 歴史事件や統計データを並べたり…

青豆とピーナッツ

『遠い太鼓』(村上春樹)をひさしぶりに再読し始めました。 一度目に読んだ時に書き込みがあって、初読は9年前だったようです。 つい最近オフィスで選書中にふと連想したのがきっかけなのですが、 他のきっかけが多すぎて、家にいるとそれが具体的に何だっ…

救済思想と生産主義、なし崩シズムとAI化する人間

預言書からキリスト教に至る宗教は、未来へ未来へと向かう精神、現在生きていることの「意味」を、未来にある「目的」の内に求めるという精神において、この近代へ向かう局面を主導してきた。 (…) ことにダニエル書は、シリア王アンティオコス・エピファネ…

「前兆」の保存とその変容

もっとも興味深い帰結のひとつは、十七世紀の信仰運動である。そこでは、救済の成就のための試みが私事化されたのであった。(…) [こんにち]すくなくとも、この信仰運動の二つの効果は心のうちに保たれているに相違ない。その第一は、自分自身の救済に必要な…

香辛寮の人々 2-10 存在と意味

「僕にも昔ね、気になる女の子がいたんだよ。小さいんだけど妙に落ち着いていた。女子には珍しく女子同士でグループを作らずにさ、男子たちのノリにたった一人で違和感なく混ざりながら、その表情には妙に惹きつけられる可愛さがあった。 ふつうの女子にはな…

出生率改善の劇薬、野党「ババ抜き」必敗則

『老いてゆく未来 GRAY DAWN』(ピーター・G・ピーターソン)を読了しました。2001年出版、原著は1999年でデータは当時のものですが、 少子高齢化問題について包括的な考察がなされています。 未来予測というより問題提起に力点があるので、 統計データが古…

「真実はいつも一つ」どころか無限に増殖しているとすれば

毎日新聞書評欄の、ちと古い2020.12.19号を読んでいて、「ん?」と思いました。 × × × 原発事故後に福島の支局で取材をしていた朝日新聞記者が書いたというルポルタージュ『白い土地』(三浦英之)の書評で、評者は国際政治学の岩間陽子という人。様々な理由…

「TRAVERSES/6」を読む (2) - 言葉は社会を動かせない

2021.1.16追記タイトルで言いたかったことが本文に尽くされないまま途絶しているので、最初に要点だけ。仮説ですが、六十年代後半からの世界的な若者の運動、それに呼応する現代思想の躍動がバネにしていたのは、「強い(鋭い)言葉は社会を動かすことができ…

Metaphorical Multiple Reflection

「共通する3つのモチーフ」 あらゆるものを見、体験する旅。 (内面と事物の創造的対応、象徴が現実を生むこと) 無関心でいられないこと、理解欲は生命力。 不可視にいたる門は可視であらねばならないこと。 「新たな問い」 旅の終わりは変化の兆し。 (そ…

世界が個人になってきた

この理論は、非蓋然的なコミュニケーションを三つの基本的諸問題の諸側面に関して蓋然的なコミュニケーションへと変換する際に必要とされる一連の媒介物を包みこむ一般概念を要請する。そのような媒介物を「メディア」と称することとしよう。 「第三章 コミ…

「TRAVERSES/6」を読む (1)

20世紀末のフランス思想誌(の翻訳)なるものを読了しました。 テーマは、冷戦とか、共産主義とか、ポストモダンとか、第三次世界大戦とか…世紀末の政治 (TRAVERSES)メディア: 単行本近現代の世界史(=本書を読む大前提の知識)に疎い人間が手を出す本ではな…

ドーマルとルーマン、〈山〉の掟とアナロジーの集中力

「おしまいには、とくに〈類推の山〉の掟のひとつを書きこんでみたいんだ。頂上にたどりつくためには、山小屋から山小屋へと登っていかなければならない。ところが山小屋をひとつはなれる前に、あとからやってきてそのはなれた場所に入る人たちを用意してお…

ドーマル、多和田葉子、橋本治と「メタファーの力」

ルネ・ドーマル『類推の山』を、その本編を読み終えました。未完の遺稿というのが惜しいです。 何も知らずに、それからまだまだ続くはずの「……」で章が終えられた次の白紙のページに出会って、呆然となりました。 そして、 ただ、それはもう、そういうものな…

ゆくとしくるとし '20→'21 3 「図書館をつくろう」

正月は毎年テレビばかり見ていて、目が痛いです。 ただ普段全く見ないので発見はいろいろあります。NHKの「100分de名著」だったか、 萩尾望都の特集を見ました。 『銀の三角』と『11人いる!』は何度も読んでいて、 でも『ポーの一族』はちらりと読んでよく…

ゆくとしくるとし '20→'21 2

今年ははちまんさんへ登ってきました。去年は面倒くさがって行かなかった気がするんですが、 それまで毎年行っていた元日の初詣を再開したという感じです。年の変わり目に間に合わせる気もなく、 新年10分前に家を出たので道中で新年を迎えました。 近くの…

ゆくとしくるとし '20→'21 1

一年を振り返るというとき、 今年は社会的にはコロナ問題で埋め尽くされていましたが、 僕自身はその影響を直接受けたというよりは、 そのニュースに触れて考えさせられることがとても多かった。 だから、書くならそういう話になる。というより、今年書いて…

「権力を取らずに世界を変える」個人編

下記引用の太字と傍線の意味は、文脈上の種類の違いです。 何十年もまえから、科学的研究は、もはや疑いのない正説という指針のもとに行われることはなくなった──とりわけ、認識理論および科学理論においてそうであった。一般に受け入れられた方策は、「プラ…

ポスト・トゥルースの意味

ルーマンの文章はことさら、その文章だけ読んで何を言っているかがさっぱり分からない。 だからその文章に補助線をいくつもいくつも、たくさん足すことになる。 すると当然その理解は自分(の文脈)だけのものになるが、同時にもう一つ気付く。 補助線を描き…

重力距離の縮尺

「ピー、フィー」 女は窓辺に駆け寄って、身をねじって探した。鷹の姿はどこにも認められなかった。しかし窓の外には思いがけない光景がくり広げられていた。向いの箱形のビルは黒々とそそりたつ岸壁に変わっていた。その隣りの白タイルの建物は山腹に横たう…

こころのこどもとともに

彼女はガールが運んできたミルクを飲もうと、つぼを傾けた。そのとき思いもかけず、つぼから流れでた液体が、紫の細長い滝のように見えてはっとした。それはすぐに影の悪戯、つぼの真上に干してあったスカーフの色が映っているのだとわかったが、つぼの注ぎ…

システムの主観、遺伝子の語り

なにかが述べられなければならない。つまり、他者が存在すれば、すくなくとも善良で平和的な(あるいは邪悪で攻撃的な)意図が示されなければならないのである。 「第一章 社会システムのオートポイエーシス」p.14 ニクラス・ルーマン『自己言及性について』…

Can one speak about unspeakable? (6)

沈黙を思う。 ひとりの沈黙。 共同的な沈黙。ひとが誰かといる時、 その場に一緒にいることがコミュニケーションとなる。 何かを伝えあい、なにかが通じあう。 意図から外れて、意図をすり抜けて。 沈黙は二人のかたわらにつねにある。雄弁の沈黙、無口の沈…

『生活世界の構造』読了

『生活世界の構造』(アルフレッド・シュッツ、トーマス・ルックマン)を本日読了しました。長かった。 一年くらいかかったでしょうか。監訳者あとがきを読んで、巻末の事項索引にまで線を引いて、そしてその流れで最初のページから(自分が線を引いた所だけ…

司書ブログ更新

一年ぶりですが、個人事業HPのブログを更新したのでリンクしておきます。選書したセットが自分の仕事の価値観に関わるものだったので、 これを機会にと考えてみました。この089は相当に内容の濃い鎖書なので、引き出せるものはもっとあるはずです。もとい、…