human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

-加藤幸子

重力距離の縮尺

「ピー、フィー」 女は窓辺に駆け寄って、身をねじって探した。鷹の姿はどこにも認められなかった。しかし窓の外には思いがけない光景がくり広げられていた。向いの箱形のビルは黒々とそそりたつ岸壁に変わっていた。その隣りの白タイルの建物は山腹に横たう…

こころのこどもとともに

彼女はガールが運んできたミルクを飲もうと、つぼを傾けた。そのとき思いもかけず、つぼから流れでた液体が、紫の細長い滝のように見えてはっとした。それはすぐに影の悪戯、つぼの真上に干してあったスカーフの色が映っているのだとわかったが、つぼの注ぎ…

システムの主観、遺伝子の語り

なにかが述べられなければならない。つまり、他者が存在すれば、すくなくとも善良で平和的な(あるいは邪悪で攻撃的な)意図が示されなければならないのである。 「第一章 社会システムのオートポイエーシス」p.14 ニクラス・ルーマン『自己言及性について』…