human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

◆読書

思考の自由、意識と関係、その起源

誰もあなたに助言したり手助けしたりすることはできません、誰も。ただ一つの手段があるっきりです。自らの内へおはいりなさい。(…)もしもあなたが書くことを止められたら、死ななければならないかどうか、自分自身に告白して下さい。何よりもまず、あなた…

評価、身の丈、個性と抽象

『思想をつむぐ人たち』(鶴見俊輔著、黒川創編、河出文庫)を読了。 これで2回目だったか、3回目だったか。思想をつむぐ人たち ---鶴見俊輔コレクション1 (河出文庫)作者:鶴見 俊輔出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2012/09/05メディア: 文庫 事実は…

悪なす善人、名刺を作って思うこと

半年以上かかっていた『1Q84』は結局、岩手から引っ越す時期の慌ただしさに巻き込まれてbook3前半で途絶し(そして引越し時に半分の蔵書とともに手放した)、なにはともあれ騎士団長への道が一歩前進、次は「多崎つくる」かと思って本棚を眺めると、訳書でな…

暑さと半死、それは修行なのかもしれない

暑いです。 こうまで暑いと、能動的になる意志が熱気に奪われる心地がします。意志は能動性の言い換えのようなもの。 先に受け身の出来事があっても同じで、意志がなければ受け続けるだけ。 「それはいやだ」という反逆が、人の意識の始まり。 だから「それ…

新しい仕事(0):本と自覚

仕事についてちゃんと考えておかなくてはと思い、その一方で直近にやる必要のあること(引っ越し準備など)が確定されてそちらに意識がとられていました。 やることが具体的なほど動きやすいけれど、抱えるタスクが具体的であるほど、それと同時に対面してい…

愚かさと愛、ねじれ、ちいさな問題

『戦中派不戦日記』(山田風太郎)を読了。 橋本治氏の解説から2つ抜粋しておく。 太字は本文中傍点部。 昭和十七年の春は、こうして軍需工場で働きながら医学校進学を目指すことになる。受験勉強は全くしていない。医者になるということは、一人で飛び出し…

『14歳のバベル』(暖あやこ)を読む

ちょっとした縁があり、『14歳のバベル』(暖あやこ)を読んだ。 SIMは途中からSF度が増してきたので魔法都市ゴドランド。 原曲はごちゃごちゃしているが、頭の中でBGMを流すので「実際」はシンプル。 以下、思ったことをちょっと書いてみます。 (SIM : S…

九条と自衛隊、思想のオーソドクシー、手続きのまっとうさ

『さようなら、ゴジラたち』の「戦後から遠く離れて」の章を読む。 憲法改正手続き法案が衆議院を通った頃の、憲法九条論。『九条どうでしょう』(内田樹ほか)は前に読んだ。 加藤氏はこの本所収の内田樹の主張にほぼ賛成している。 (以下、いろいろ混ざっ…

「あれは想像です」、TVピープル、道路地図

土曜日の昼過ぎに呼び鈴が鳴る。 戸を開けると佇む女性。 日蓮宗の分派の勧誘。 歴史の遺物だと思っていたが。「キリスト教の、あの…シト…」 「ああ、エホバのことですか?」 「そうです。あれに比べると、規模は小さいようですね」 「あれは想像ですから」…

身をやつす、苦労の「言い値買い」、Y.Kのこと

朝食時に『小説修業』(小島信夫、保坂和志)を読み始める。 ハシモト氏の「貧乏は正しい!」シリーズはこの後になりそう。週に一度の洗濯は朝起きて食器を洗う前に洗濯機のボタンを押す。 1時間の暖気なし乾燥「風乾燥」を含めて、朝食を終える前にブザーが…

原発神話と小商い、精神の貧乏性

『小商いのすすめ』(平川克美)を読む。 SIMは村松健「北帰行、ついておいで」。 汎用性の高い一曲。小説以外の、思考を巡らせる本でよく流す。「経済成長から縮小均衡へ」の章で、橋本治氏の本の引用がある。 自分も全巻持っている『貧乏は正しい!』の初…

SIM、不戦派日記、徒党社会の多様性

脳内BGMという表現がごわごわしているので略語を考える。 Back Ground Musicの目的をそのまま持つが、性質をその略語に取り入れる。 たとえばSynaptic Imaginative Music、SIM。 実体すなわち波動性を有さず、頭中を走る電気信号によって奏でられる。 虚数は…

ながら書き、< harmony / >、1Q84読中

「片手間に文章を書く技術」を身につけたいと思う。 時間が惜しいからではない。 書く時間によってほかの時間を分断させたくない時がある。 それでも書いておきたいことがある時がある。 日常的な思考の継続のバリエーションをいくつか想定してみる。 思うと…

『コンヴィヴィアリティのための道具』を最後まで読むための覚え書き

返却期限までに読み終えることができませんでした。 もう一度借りるか、買うか、どちらかをしたい。 という思いを形にするべく印象をメモしておきます。 (後記:やはりいくらか書評調になってしまいました) × × ×コンヴィヴィアリティのための道具 (ちくま…

free dialogue in vivo 4

「そういものが、あるとしての話です」 現実とは何か? 畑を耕したり、車の部品を組み立てたり、そういうことだけではない。 本を読むことも、一人でご飯を食べることも、そういったことも含む。 現実は、生活と言い換えてもよい。生産性という観点に立てば…

コンポステーラの記憶、歩く必然

四国遍路の回想記↓は、序盤の山場手前で長らく更新が途絶えています。 司書講習が始まる前の、時間を少々持て余していた時期に書き始めたものです。 社会的立場は今もその時と変わりませんが、今はなかなかその時間が現れてきません。 大沢温泉(値段の安い…

病中後の審美的生活メモ

今週は過動で体調を悪くして、寝飽きるくらいずっと寝込んでいました。 過労ではなくて「過動」(ボルダリングは生活の一部)、登り過ぎです。 一日おきの一日7時間は、あまり休憩を挿まないにしては負担が大きい、 という教訓を得ました(3日以上間を空け…

限界芸術と「身の丈、ありもの生活」

『特性のない男』の三冊目を今日読み終えました。 どの巻も最後の章はとくに思索に富んでいるのですが、 三冊目終章の以下の箇所を読んでいて、鶴見俊輔氏の「限界芸術(論)」を連想しました。「限界」という単語がそうさせたのでしょうが、 この連想における…

「土着の玄人」の安定感

二人の言うことは同じではありませんが、 共通のなにかを見ることができます、 ということの中身について書きます。ハシモト氏の文章には説明がいらないほど克明かつ大胆なので、 氏の文章の他との関連を見出せた時には、 その「関連先」を理解する大きな手…

存在しない神を愛する

と、こう言った時に、 「神は死んだ」(ニーチェ)の近現代が念頭にあるように聞こえますが、 最初にそう思って、けれど読むうちに違うと気付きました。 エレクトラって、ギリシャ神話ですもんね。 単なる想像上の報酬(たとえばルイ十四世の微笑)は払われ…

遡創造と不確定性原理

『根をもつこと』を返却した日に、もともと書架の傍に並んでいた、 『重力と恩寵』を借りました。重力と恩寵作者: シモーヌヴェーユ,Simone Weil,渡辺義愛出版社/メーカー: 春秋社発売日: 2009/08/01メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (2…

非現実の非所有

これほどの長編(全6巻)を本腰を入れて読むのは始めてですが、 同じテーマが繰り返し現れる時に、 「それが長編であること」の効果を感じています。一つ目の引用の章タイトルがないのは本を返却していて手元にないからで、 ではなぜ引用ができるのかといえ…

退廃から遠く離れて ─ 『根をもつこと』を読んで

『根をもつこと』(シモーヌ・ヴェーユ)を、いちおう読了しました。 時間切れという面もありますが(おそらく日が変わりたての今日が返却日)、 読みたいと思った部分である第一部と第三部はひととおり読みました。根をもつこと作者: シモーヌヴェーユ,Simo…

零の禅、思惟の啓蒙、メカニスムの持続

森博嗣のVoid Shaperシリーズはいま二作目を読んでいます。 (タイトルの"blood"、"scooper"に、装幀が"bamboo"です)ブラッド・スクーパ - The Blood Scooper ヴォイド・シェイパ作者: 森博嗣出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2013/04/26メディア: Kin…

連想の契機、四次元の意識空間

『博士、質問があります!』(森博嗣)に、SFのテーマで4次元の解説があって、 その中に「厚さ方向にだんだんと表情を変える金太郎飴」という例があります。 二次元空間にいる人(たとえば紙に描かれた人)が、 空間を通過するその金太郎飴を見ると、 たとえ…

梨木香歩と橋本治と「物語」

以前に「併読リンク*1」というタグを作って、 そういうタグを作ったからこのテーマが書きにくくなった、 ということについて書きましたが、 その理由を「"併読リンク"という現象が自然発火的でなくなる」と書いて、 それはそうかもしれないがそれは根本原因…

シモーヌ・ヴェーユと岡潔と「渾身系」

長いまえおきですが、まず花巻近隣の公共図書館について。 司書講習の後半くらいから、図書館めぐりをしていました。 車があったので、高速を使って市外へも行きました。 東北の有名どころとしては、南相馬、川崎村、一関へ行きました。 岩手県外ではあと、…

岡潔と安西水丸の共通点

まさかこの二人がつながるとは。 好きな画家は大観と久隅守景、外国ならゴッホ、ラプラードなどである。 (…) 守景のは実物は見ていないが、ある画家から新聞に出ていた写真版の「夕顔欄」を見せられて好きになった。この絵には半裸の夫婦よりも、それを見…

「横文字」的現象について(ホントなんだっけな…)

一つ前の記事を書いてる途中なんですが、 (途中でもう投稿しちゃいましたが) 「タイムリー」の話になったので寄り道します。 今日偶然読み始めた『ゲド戦記』(ル・グウィンの原作小説の方)もそうなんですが、 なにかの節目にそれとなく読む文章が非常に…

『特性のない男Ⅰ』を読んで (2)

前回の続きです。 だが興奮状態や興奮した行為の状態にあっても、彼の態度は情熱的であると同時に無関心だったのである。彼はかなりいろいろな経験をしてきたし、かならずしも自分には意味のないことでも、それが彼の行動意欲を刺戟さえすれば、いつでも身を…