六、今日も元気に(45.指)/「星の恋人」
切り落ちた
指は
挿し木にしてね
今日も元気に
洗濯をしてる
「星の恋人」(市川春子『虫と歌 - 市川春子作品集』)
1 頭 | 21 インキ | 41 金 | 61 家 | 81 礼儀 |
2 緑 | 22 怒り | 42 馬鹿な | 62 可愛い | 82 狭い |
3 水 | 23 針 | 43 ノート | 63 ガラス | 83 兄弟 |
4 歌う | 24 泳ぐ | 44 軽蔑する | 64 争う | 84 怖がる |
5 死 | 25 旅行 | 45 指 | 65 毛皮 | 85 鶴 |
---|---|---|---|---|
6 長い | 26 青い | 46 高価な | 66 大きい | 86 間違い |
7 船 | 27 ランプ | 47 馬 | 67 かぶら | 87 心配 |
8 支払う | 28 犯す | 48 落ちる | 68 塗る | 88 キス |
9 窓 | 29 パン | 49 本 | 69 部分 | 89 花嫁 |
10 親切な | 30 金持ち | 50 不正な | 70 古い | 90 清潔な |
11 机 | 31 木 | 51 鮭 | 71 花 | 91 戸 |
12 尋ねる | 32 刺す | 52 別れる | 72 打つ | 92 選ぶ |
13 村 | 33 同情 | 53 空腹 | 73 箱 | 93 乾し草 |
14 冷たい | 34 黄色い | 54 白い | 74 荒い | 94 嬉しい |
15 茎 | 35 山 | 55 子供 | 75 家族 | 95 あざける |
16 踊る | 36 死ぬ | 56 注意する | 76 洗う | 96 眠る |
17 海 | 37 塩 | 57 鉛筆 | 77 牛 | 97 月 |
18 病気 | 38 新しい | 58 悲しい | 78 妙な | 98 きれいな |
19 誇り | 39 くせ | 59 あんず | 79 幸運 | 99 女 |
20 炊く | 40 祈る | 60 結婚する | 80 うそ | 100 侮辱 |
× × ×
- 作者: 市川春子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/11/20
- メディア: コミック
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「八十八文」は書きながらいろいろ案配が決まってくる仕様ですが、
最優先はインスピレーションというか連想なので、
今回(六)のひらめきにより引用もアリにしました。
一から五が四行文なのはこの形式で書き慣れているからです。
連想のついでに、市川氏マンガについて書き溜めていたことを少し。
『虫と歌』は先週に手に入れて、今日から読み始めました。
『25時のバカンス』は先に持っていたのですが(買う前に数ページだけパラ見しました)、
絵の安定感からして前者が最初だなとわかります。
そしてその最初から『宝石の国』まで、絵の描き方は一貫しています。
「事実の描写には絵や図は写真にはかなうまい」というのは、実は早計なのである。
私ははじめて牧野富太郎の作品をルーペで見て驚いた。針の先のような筆やガラスペンの線がそこにあった。いいかえれば観察した対象を線に翻訳するのである。
(…)
さきに対象を線に翻訳するといったが、それは、自然界には線でできているものはないということである。線はあいまいなものを峻別し、単純化し、明確にする。線は認識の証しとなる。できたものは絵というより説明図である。写真とちがって、説明のためには時間や空間のあり方を越えて表現することができる。
「植物図譜」p.134-135(安野光雅『狩人日記』)
この抜粋部は牧野氏が描く植物の標本図について書かれた箇所ですが、
僕はここを読んで「マンガも同じだな」と思い、付箋を貼りつけていました。
節の最後には、こう書かれています。
「情報化、そして認識ということは、いいかえれば取捨抽象の創造的作業のことである。」
思えば自分が(立ち読みで済まさず)あえて買うマンガはほぼ手書きで書かれた作品で、
たぶん手で描かれた絵から「その当のもの」が別の形で立ち上がることが好きなのです。
たとえば斜線のふるえや密度で、色や質感や奥行きが表現されるような。
何も描かれない空白の領域が、そのコマ全体の空間を張りつめさせるような。
特に、安野氏が「取捨抽象」というなかで捨象、
つまり描かないことで表現されるものに興味があります。
それは僕が文章を書く動機の一つである、
「意味の外に向かう言葉の探求」と繋がっています。
市川氏のマンガは1コマの密度が低い、描線が少ないとは
最初に『宝石の国』を読んだ時から思っていましたが、
それでいて(それだから?)コマに緊張感があり、
実際に描かれているよりはるかに豊かなイメージを読み手に喚起します。
そしてそのイメージを一言でいうなら「静謐」です。
最後に、引用した「星の恋人」について少し。
まだ1/3くらいしか読んでませんが(そして読了はおそらく来月という遅さ)、
引用した詩のようなフレーズを噛みしめるうちにふと気付きました。
主人公「ぼく」のおじさんと一緒に住む娘は「さつき」と呼ばれているのですが、
「つ」をミラー反転させれば「さしき」ですね。