human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

"to keep things whole"について

We all have reasons
 僕らはみんな動くための
for moving.
 理由をもっているけど
I move
 僕が動くのは
to keep things whole.
 物事を崩さぬため。


"Keeping Things Whole" Mark Strand
「物事を崩さぬために」マーク・ストランド(村上春樹訳)
一部(最後の一節)を抜粋

2つ前の記事↓と同じ本からの抜粋です。
cheechoff.hatenadiary.jp

本記事を書くきっかけは、今日"to keep things whole"を唐突に閃いたからです。

今は桜が散り続ける時期で、この寒気で風が強ければ散り切るのかもしれません。
が、会社の食堂から見下ろせる桜は八分以上の花が際どく残っている印象です。
仕事の日は毎日、おやつ時に4階の食堂に上がり、5分程度ストレッチをします。
その間は窓の前に立って外の景色を眺めるのですが、この時期は桜が見物なのです。

今日もそうして桜を眺めていて、ふと『群青学舎』(入江亜紀)の短編が去来しました。
「あれが"to keep things whole"ではないのか」という思いとともに。
帰って調べると、その短編は「時鐘(Time-Bell)」というタイトルでした。
散文的に粗筋を書いても仕方ないので…漠然としたことを書きましょう。

女の"whole"は即物的に普遍性を備え、おそらく男の"whole"は普遍的抽象なのでしょう。

群青学舎 二巻 (BEAM COMIX)

群青学舎 二巻 (BEAM COMIX)

 × × ×

2016.3.28追記

「マンガ」のタグにも「読書」タグと同じく作者名タグをつけようと思って、
そのタグがついた記事をまとめて読み返している中でこの記事を読んで、
"to keep things whole"とは「雪かき仕事」(@村上春樹)のことじゃないかと気付きました。

この元々の意味は言葉通り「雪が積ったら屋根の雪下ろし、道の雪かきをする」ですが、
ダンス・ダンス・ダンス』では「文化的雪かき」という表現がされていたり、
あるいは内田樹氏がハルキ小説の素晴らしい点として挙げている
「ご飯を美味しく食べる」、「きちんと掃除をする」なども雪かき仕事の一種だし、
もう時間が経ったのでネタばらしをしますが、上記の「時鐘(Time-Bell)」の要点は
「老管理人の死に居合わせた女生徒が突然に子づくりに興味を示す」というもので、
もっと即物的に書けば「人が一人減ったから一人増やす」という、
人類を主語にした"to keep things whole"であり「雪かき仕事」の典型なのでした。

ハルキ氏もエッセイ(最近読んだのは『うずまき猫のみつけかた』)でよく書いてますが、
「そういうこと」は無邪気に、そして真剣にやるものですね。
動物がそうするように。