human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

かるたのこと

『読んだ本はどこへいったか』(鶴見俊輔)に、かるたの話が出てきます。
島崎藤村が書いた文に岡本一平の絵をつけた「藤村いろは歌留多」。
この二氏の伝記のような記述もある(岡本一平は「太陽の塔」作者の父らしい)。
鶴見氏は4歳の時からこの歌留多に親しみ、その含蓄が今も頭の中に残っている。

かるたの話の中で、氏が息子と共同で創作かるたを作った時のことが書かれています。
息子が言った言葉を鶴見氏が紙に書き、そして息子が絵をつける。
なんだか時の流れがとてもゆっくりで、いいなあと思いました。
生活から生まれた言葉と親しむことで、言葉がより身近なものになっていく。

私は彼と一緒にかるたを作った。私が「あ」と言って、彼が「あ」から思いつく言葉を言う。その言葉を私が紙に書き、「い」「う」「え」「お」と続けて、いろは四十八文字のカードを作る。さらにその字を私が読んでやり、彼が思いつく絵を描く。そういうやり方で手製のかるたを作ったんです。できたかるたの名は「赤影怪獣かるた」。彼は怪獣に熱中していたからね。「赤影」は漫画に出てくる忍者です。
「モラエスの日本文化」p.78-79


かるたといえば、小田嶋隆氏の吉例いろは歌留多を思い出します。
「ア・ピース・オブ・警句」の年末特別号として毎年恒例になっています。
こちらはコラム同様、社会批評や風刺がメインです。
毎年楽しみにしていますが、同じお題(枠)で何年も続けられるのは凄いですね。

僕も冒頭のツイートみたく、既存の諺などをもじって遊ぶことがあります。
鶴見氏の本のかるたの話を読んだ時に一瞬「作ろうかな」と思いました。
が、たぶん僕が作れるのは(身体性を伴う)生活に基づいたものではありません。
そして今その一覧を作る意味も意欲も、考えてみればありません。

というわけでこれは夢にしておこうと思います。
有言実行、無限時効。(大きく出たな)