human in book bouquet

図書館司書を念頭に、ボルダリングと読書の生活。

ながら書き、< harmony / >、1Q84読中

「片手間に文章を書く技術」を身につけたいと思う。
時間が惜しいからではない。
書く時間によってほかの時間を分断させたくない時がある。
それでも書いておきたいことがある時がある。
日常的な思考の継続のバリエーションをいくつか想定してみる。
思うともなく、過ぎ去る時間とともに形をとるかとらないかという思考。
ふと意識に浮かび上がる時に「前の続き」だったり「展開」だったりする。
あるいは、経過点を一つひとつ確認して着実に前進していく思考。
足跡が消えてしまわないように、一歩を踏み固めながら前進していく。
足跡の間隔、向き、リズムが、「一歩その時」を物語る、その声を聞くために。
もしかしたら、同じと思っていた足跡の形も、一定ではないかもしれない。
どこかで靴を履き替えたのかもしれない。
ことによっては、同じ足跡は一つとしてないのかもしれない。
足跡はメタファーであり、ほんとうは目で見るものではないから。

もう一つ、「片手間」と書いた意味。
PCの、ネット空間の、引きずり込まれる力をすり抜けるために。
ただし、想像力の抑制、可能性の無視からではなく。
偶然を排さず、かつ必然を見失わず。

「走り書き」というほど慌てるわけではなく、しかし勢いはそのように。
ぽつぽつとやってくる客に料理を出すその合間に、立ったままカウンターで言葉を紡ぐ寡黙なウェイターのように。料理長は特に気に留めない。
仮に「ながら書き」と名付けておく。


 × × ×

昨日、紫波図書館で月例の貸出、5冊。
そのうち『ハーモニー』(伊藤計劃)を読み始め、高いシンクロを感じる。

「さっき見てたのは、本だったの……」
 わたしはびっくりして訊ねた。実際、それはわたしが生まれて初めて本というものを目撃した瞬間だったろうから。
「そうだよ、霧慧トァンさん。わたしが持ってたのは、本。いつも持ち歩いているし、教室で休み時間には大体これを読んでるよ」
 そう言ってミァハがカバンから取り出してみせてくれた本の表紙には、「特性のない男」という文字が書いてあった。
「なんだか、つまらなそうなタイトルだね」

< harmony / > Project Itoh p.26-27 ; 2010 printed ; Hayakawa Mystery

『特性のない男』(ムージル)の主人公ウルリヒは、「私がなにか本を書きたいと考えたら自殺しようと思っています」と義兄に淡々と告げる。世間話のついでに。
「特性のない男」を完膚なきまでにリスクヘッジされた児童公園で読み耽る御冷ミァハは、自作した拒食症を発症する薬を飲み、近未来健康至上社会で「公共物」となった子供の身体を毀損するべく自殺を遂げる。ミァハの2人の友人のうち一人である『ハーモニー』の主人公霧慧トァンは同じ薬を飲むが生き残る。
『特性のない男』を読み終え、『ハーモニー』を読み始めた男は、

 × × ×

今日、『心臓を貫かれて』(M・ギルモア、村上春樹訳)を読み始める。
脳内BGMはうみぬこPの「アンドロメダの哀しみ」
「家族の虐殺の話」であり、どう展開するかわからないが、プロローグから静けさが感じられたため。
違和感があればまた変わるだろうと思う。

 × × ×

寝しなに読み始めて幾月、昨晩ようやくbook3に入る。
語り手がいきなり「牛河」になって少々面食らう。
その前、天吾が意識のない病床の父を前に回想を語る。

もともと中心のない人生ではあったけれど、それまでは他人が彼に対して何かを期待し、要求してくれた。それに応えることで彼の人生はそれなりに忙しく回っていた。しかしその要求や期待がいったん消えてしまうと、あとには語るに足るものは何ひとつ残らなかった。人生の目的もない。親友の一人もいない。彼は凪のような静謐の中に取り残され、何ごとに対しても神経をうまく集中することができなくなった。

村上春樹1Q84 book2』

そうかもしれない。