human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

身体性の賦活による無意識へのアクセス経路構築

毎日新聞日曜版に連載している梨木香歩氏の「炉辺の風おと」のなかに、
興味深い二冊の本の紹介がありました(7/26日版)。

 マイケル・D・ガーション『セカンドブレイン』
 傳田(でんだ)光洋『第三の脳』

紹介によれば、タイトルにある「第二の脳」「第三の脳」は、それぞれ腸と皮膚だということです。
前者について、一部を記事から抜粋します。

アメリカの研究者、マイケル・D・ガーション博士は著書『セカンドブレイン』で、腸は脳とは別に、「感じ、判断し行動する指示を出す」独自の神経系を持つ、第二の脳であるとしている。

「毎日くらぶ」(毎日新聞日曜版) 7/26

梨木氏が、認知症になった氏の友人とのふれあいのなかで、論理的な言葉のやりとりができなくなり、共通の記憶の参照ができなくなっても、表情やしぐさや昔からの習性(くせ)によって、友人が「その人」であることをまざまざと感じられると書く。
「個性(らしさ)は消えない」というタイトルの小連載、その5番目の本記事はそのような文脈で、個性を醸成する器官は脳だけではない、という確信を力強く支えてくれる学説として、この二冊が挙げられています。

 × × ×

僕はこの新聞記事にプラグマティックな関心を刺激されました。

腸と皮膚がそれぞれ第二の脳、第三の脳と呼ばれるからには、脳の機能を完全に代替するとまでいかなくとも、少なくとも一部は脳と似た振る舞いを示す(というか脳が身体に与える影響と類似の影響を腸や皮膚が与えることができる)、または腸や皮膚が脳の機能に直接・間接に影響を与えていることは確かなのでしょう。

その科学的知見を実地的表現になおせば、腸の状態(何を食べたか、または満腹か空腹か)や皮膚の状態(どんな服を(皮膚との接触面に)着ているか、乾燥や湿潤や日焼けの具合、感度の差)によって、脳の機能、すなわち意識状態が変わってくる、といえる。

この意識状態が指すのはおそらく、「頭でそうしようとする局面」ではなく、「頭でそうしようとするがなんだかその通りにいかない局面」である、つまり無意識が(主に?)作用する局面だと思われます。

という思考の筋道によって、
身体の感度を上げることで無意識の作用性(意識作用のメタ構造)に接近できるのではないか、
つまり本記事のタイトルのようなことを考えたわけです。


脳と身体は二律背反である、とは養老孟司先生が著書でよく言われていますが、
無意識は身体が(100%でないにしても)主導している、
とシンプルに考えられないことはない。

まあ、経験的にはそう突飛な話でもありませんね。

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第三の脳――皮膚から考える命、こころ、世界

第三の脳――皮膚から考える命、こころ、世界

  • 作者:傳田光洋
  • 発売日: 2007/07/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)