human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

14日目:高知市街で一本歯を探すが見つからず 2017.3.14

ロルバーンのリングノートに書いた14日目の日記は以下だけです。
というのも、この日は歩き以外の移動日で、その移動の際に日記を携帯するのを忘れたからです。
(メイン荷物の登山ザックを奈半利駅のロッカーに入れたのだったかな…?)
高知市からの電車の帰りに、歩き遍路必携の遍路地図である「黄色い本」の余白にメモをした、という内容だけ日記に書いてあります。
そしてその黄色い本は最早手元にはありません。
以下、遠い記憶を呼び起こしながら書きます。

<14日目> →奈半利駅高知駅→宿(ホテルなはり) 9km
 ⇒遍路地図のさいごのページ参照

四国遍路を出発してちょうど二週目となったこの日は、高知市街へたどり着く手前で早々に宿を決め、電車で先に高知市に入って履物屋を探しに行きました。
一本歯の下駄の歯がアスファルトですり減り、まともに歩ける状態ではなくなっていたので、歯を替えてもらうか、そうでなくとも下駄本体を買える店を探す必要がありました。
これまでの道中、四国の履物屋事情について地元の人に何度か尋ね、生活感覚とはいえ「高知で下駄履いてる人は見たことない」などと言われて、不安ではありました。


奈半利駅から高知駅へ向かう鉄道はモノレールのように街並みの上を走ります(モノレールなのかな?)。
これから歩いて向かう所へ先に電車で行くのも変な気分ではないかと思えますが、歩くことが日常となった当時の自分は、日常とは完全に分離した「非日常」として、淡々と受け入れていたはずです。

高知市は土地が平坦で、南に大きく開けた印象がありました。
 市内に限りませんが、高知県の海沿いの町はだいたい、広域で標高が低い。
 (六甲や尾道のような、斜面に家屋が連なるような光景は見られません)
 海抜を示す立て札が至るところに立てられ、避難所の案内板も多く見かける。
 ちょっとした小山(神社や祠の敷地程度の)があれば、その上方に備蓄倉庫がある。

高知駅へ着き、旅行案内所で情報を集め(→得られず)、ネットカフェへ行って市内の履物屋について検索することにしました。
自分はガラケーしか持っていなかったからです。
(旅の出発前、本当は携帯すら不携帯にするつもりだったんですが、道中での宿の予約を公衆電話に頼るのは相当にリスキーだというまっとうな認識が勝ちました。徒歩という原始的な移動手段に合わせて文明の利器は然るべく排除する、というようなことを計画時に考えていました)
電話をかけたり、連絡がとれずいくつかの店の地図をメモして実際に足を運びましたが、捗々しい結果は得られませんでした。

仕方なく、神奈川県在住時に自分が初めて天狗下駄を買った、東京の履物屋に電話をして、何日か後に泊まる予定の宿に下駄を送ってもらうことにしました。
そしてもちろん、その宿にも予約を取り、荷物が届くことを伝えて了承してもらいました。
こうなると、下駄を手に入れるまでは、歩く行程を予定通りこなさねばなりません。
元々はその日の進行具合で当日に宿の予約をすることも多かったので、なかなかのプレッシャーとなります。

とはいえ、こうなるだろうとは数日前から予感していたことです。
旅に予定外はつきもので、それを嘆かずに粛々と受け入れるのが旅行との違いであり、さらにはこれも(弘法大師のお計らいによる)縁だと思って有難く思うのが遍路人の心得であります。
本当に自分がそう思っていたかは、知りませんが。


夕方まで市内をあちこち歩き、電車に乗って奈半利に戻ってきた時は日が暮れていました。
宿には、というかホテルですが、最上階に展望露天風呂があったことを覚えています。