human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

「いいんだよ」

「パパ」
「なんだい?」
「パパって、ほんとに、パパ?」
「たぶん」
「ぜったい、っていって!」
「なんで?」
「こわいから。パパ」
「なんだい?」
「ぼくって、ほんとに、ぼく?」
「そうだよ」
「えええっ! なんで? パパは、パパじゃないかもしれないのに、どうして、ぼくはぼくだってわかるの?」
「そうであってほしいから」
「そんなんでいいの!」
「いいんだよ」

高橋源一郎さよならクリストファー・ロビン』新潮社

「あの、私に会ったのは、どうしてですか? 何が目的ですか?」
「一度お目にかかりたいと思っただけ。好奇心です。いけませんでした?」
「いえ、とんでもない。震えるほど光栄です。貴女の名前を教えて下さい。たぶん、有名な科学者でしょう。そうでなければ......」
「私は、ウォーカロンです」
「嘘だ。そんなはずはない」
「では、人間です。先生の判断に従いましょう」
「素晴らしい」僕は頷いた。知らないうちに身を乗り出していた。

森博嗣『彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone?』講談社タイガ

さよならクリストファー・ロビン

さよならクリストファー・ロビン