human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

自己が臍から溶け出した日

有休の一日で『俺俺』(星野智幸)を読了。

俺俺 (新潮文庫)

俺俺 (新潮文庫)

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「人もモノも交換可能」という経済原理が、家族にまで適用されたら。
こういう感覚には、若い人ほど抵抗がないと思う。
というのも、消費者至上主義は亢進し続けているから。
だけど、その究極形がどんなものかを、この小説は見せてくれる。

大事なのは、ふつうの大人がどれだけ非道徳的・非倫理的に思う価値観であっても、
その価値観を体得しながら成長する子どもにはそれが「ふつう」だということ。
この小説みたいなことは当然起こらないけど(小説がそれを目指す必要はない)、
登場人物のような感覚を持つ人はいるだろうし、きっと増え続けるはず。

中庸の良さは、両極を知ってこそ理解できる。
実は本書には、その両極が書かれている。