human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

他者への越境について

この自覚は決して手放さない。

[151] 「……について語る」(parler de…)と「……に対して語りかける」(parler a…)という二つの動作の差異をレヴィナスは強調する。「について語る」とはある体系的な知への対象の還元(認識、了解、命名、所有)であり、「に対して語りかける」とは他者への越境である
「私にとって《語られたこと》(le dit)は《語るという行為》(le dire)ほどの重要性をもちません。その情報としての内容よりも、ある対話者へ向かって語りかける行為そのもののほうが私にとっては重要なのです。」(Ethique et Infini, p.39)
パロールの本質はそもそもその意味作用や叙述能力のうちに存するのではなく、それが励起する返答のうちに存するのである。」(Noms propres, pp.40-41)


「p.234 "パロールの自由"の訳注」p.272(エマニュエル・レヴィナス『困難な自由』内田樹訳)

切迫のない越境は他者を侮り、覚悟のない越境は他者に侮られる。
覚悟は切迫に支えられて屹立する。
切迫はどうしようもなく沸き起る。
切迫は変化に付随して起き、時には変化そのものである。

変化とは起きるものであり起こすものでもあり、そして切迫とは起きるものである。