human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

橋本治の本とロマサガ3のこと

「平日和書」として『退屈な迷宮』(関川夏央)をおととい読了しました。
1月末に読み始め、2週間に5日のペースで読んで、意外に時間がかかりました。
読む前の印象と違って資料的な書物で、内容は南北朝鮮のルポや歴史の解説など。
日本が北朝鮮をもてはやしていた時代があったことは、この本で初めて知りました。

平日和書の話はこの本を読み始めた時に書いた記事↓にあります。
cheechoff.hatenadiary.jp

この本の最後には朝鮮半島の詳細な年表があり、これも意外に興味深く読みました。
受験科目として歴史を毛嫌いしていたのですが、ちゃんと読み始めると面白い。
その理由は後で触れますが、韓国の大学生は頻繁にデモをしていたことが印象深い。
年表の中で、デモを受けての政府の「非常事態宣言」という言葉を何度も見ました。

この年表への興味を活かして、次の平日和書は『二十世紀』(橋本治)にしました。

二十世紀

二十世紀

本書は去年の夏期休暇中に読了を目論んで失敗し、読書中断としていたのでした。
去年の夏は『アンダーグラウンド』(村上春樹)を集中的に読んでいました。
この辞書級に厚い春樹本の合間に読んで1週間で2冊読了、というプランが無謀でした。
それがありハシモト本から遠のいていましたが、再開の丁度よいきっかけになりました。


それで、一本歯で修行球をくるくる回しながらこの本の脳内BGMを考えていました。
読む前から本のジャンルは分かっているので、雰囲気の合った曲を選ぶと捗ります。
日常的に聴く音楽を頭の中でザッピングして、「これだ」というのを見つけました。
以下にその時に気付いたことを書くんですが、マニアックな話になるかもしれません。


RPG(ゲームのジャンル)の中に、複数の主人公を選べるタイプのものがあります。
個々の主人公ごとに固有のイベントがあり、また全員に共通のイベントもある。
同じ一つの世界の中で彼らは駆け回るわけで、フィールドマップは共通しています。
そして城や洞窟や砂漠など、主人公がいる場所には固有のBGMが流れます。

あるゲーム(ロマサガ3ですが)では、個々の主人公に固有のテーマ曲があります。
そのテーマ曲は、一般的な(?)町や村にいる時に流れます。
しかし上に書いた通り、主人公の個性に関わらず同じ曲が流れる場所もあります。
この違い(human basedの曲とfield basedの曲)が興味深いな、とふと思ったのです。

上で「これだ」と思ったのはロマサガ3のハリードのテーマ曲です。
彼は腰に差した曲刀を相棒に、諸国をさすらう雇われ剣士です。
という彼の曲は「歴史を渡り歩く」時の音楽として適しているという連想です。
この話と上の気付きとどう繋がるかといいますと…

同じ場所にいても、そこにいる人間によって流れる音楽が変わるわけです。
それはその人の価値観や目線を表しているのではないかと思いました。
たとえば同じピドナの街にいて、ハリードなら諸国漫遊、ユリアンなら好奇心の湧出、
トーマスならビジネスチャンス探求、サラなら無意識の慈善、等々。

そしてこの応用として、同じ人の中に違う曲が流れる場合を想定します。
すると、その人に個々の曲の印象(上でいう主人公たちの印象)が深く刻まれていれば、
自分の中を流れる曲によって、様々な目線を獲得できるということになります。
音楽で気分が変わるとはよく言いますが、その「気分」とはとても広い概念なのです。


『二十世紀』も分厚いですが、諸国漫遊の気分でちまちま読み進めようと思います。