human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

「修行球」の軌跡中心について

前に、続くと言いながら放置していた「球」の話です。

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これは健身球と呼ばれる球で、手のひらで回るように転がします。
中国のお土産でよくあるそうで、ネットでも簡単に買えます。
指を鍛えるのによいらしいのですが、手に入れたきっかけは違う所にある。
この球の名前を最初は「修行球」として知ったのでした。

箱は青と金色の絹の錦でくるまれたすばらしいもので、中には鏡のように滑らかなクロームの球が二つ、やはり絹でできた容器に入っていた。(…)蓋の内側に、折り畳まれた注意書きが入っていた。

 八百年も昔のこと、中国の高官たちは、ここにある修行球によって身体の健康と精神の落ち着きが得られると信じていました。この貴重な品は中華人民共和国を訪問中のレーガン大統領夫妻にも贈呈されたことがあります。(…)くつろぎと瞑想にも最適。修行球を転がせば、神秘の音がかなたから聞こえます。

 一つずつ球を取り出した。滑らかでよく滑ることには驚くばかりだ。ぶつかるとピンと音をたて、手の中で転がすと、かすかに光る世界をもてあそぶ思いがし、リラックスできる。ノン・リ・タンにも似ている。それは、(……)特別な重さを持った東洋のボールだ。(……)
「第2章 触れる」p.126-127(ダイアン・アッカーマン『感覚の博物誌』)

結果的に修行好きな自分はまずこの名前に食いつきました。
そして下線部の記述を見て「これは一体…」と俄然興味を持ちました。
省略部がその核心なのですが、なぜ伏せるかは想像にお任せします。
検索しても出て来ない用語は、ネット社会における古い本の役得ですね。

ちなみにこの本は『野ウサギの走り』(中沢新一)の巻末広告で知りました。

話を戻しまして、この球はそのような経緯で3年以上前に買いました。
買ってみてしばらく遊んで、これで何ができるかなとしばらく考えました。
当時はボルダリングに興味があったので「指を鍛えよう」と思い付きました。
それからしばらくは続いたのですが、いつの間にか棚の上の飾り物になっていた。


時間はつい最近に戻りまして。
なぜ前の記事の最後にこの話を書こうとしたかなんですが…
一本歯立姿勢での臍下丹田をどう意識しようと考えていて、ふと球に目が留まった。
これは臍下丹田の意識の涵養に使えるんではないか、と。

動作をしない立姿勢だと、短時間でもなんとか丹田を意識している感覚はある。
しっかり意識できていれば、足先(歯)の震えがぴたりと止まると前に書きました。
ですが、何か動作をしているとこれがなかなか上手くいかない。
ならば動作の初歩(=その動作自体にあまり意識が向かない)から慣れていこう。

というわけで、一本歯で立ちながら健身球を両手でくるくる回すことになりました。
参考までに本記事の最後にyoutubeで見つけた動画を貼り付けていますが、
回すと言いながら僕はこの動画のように球はフリーに動いてはいません。
技巧のレベルの話ではなく、僕は指で球を掴みながら順送りするようにしています。

なので前と今回に載せた写真の状態を経つつ2つの球が円の軌跡を描くように動く。
この動きのディテールにここでこだわるのは、さっきもう一つ思い付いたからです。
臍下丹田を意識しつつ、「球を回しながら球が描く円の中心を意識してみよう」と。
まだ少ししかやってないですが、なんだかこれも同じ効果があるように思えました。

頭で考えれば、「変形する円軌跡の中心」はとても意識しにくいものです。
前に丹田のことを「部分を意識しないために意識する”意識しにくい部分”」と書いた。
つまり球の円軌跡の中心も「意識を身体全体に向けるダミー」になるかもしれない、と。
まあ、これを検証するには健身球の扱いがまだまだ下手ではありますが。

それにしてもすごいですね、この手↓は。後半がピンボールみたいです。


4 Baoding Balls - YouTube