human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

<山羊さん郵便>について

「あのね、そりゃ弁当っていうくらいだからいろいろ入っているだろうということはわかるんだけど、たとえばどういうものが入ってるんですか?」
「だから、洋風のものがいろいろと入ってるんです」
ということで、これは<山羊さん郵便>風迷路に迷いこんでしまいそうなので、僕は洋風弁当を断念しべつの単品料理を注文した。
「わりと変な一日」(村上春樹安西水丸『村上朝日堂の逆襲』

「白山羊さんたら黒山羊さんの、お手紙食べたぞメーメーメー」
みたいな歌か童話かが、山羊さん郵便ではなかったかと記憶しています。
あれはメッセージを託したモノがまさに即物的に処理された例で、
山羊ならぬ人ならこのような例は枚挙に暇が無いものと思われます。

彼女の愛情こもった手料理を、彼は明日も生き続けるために食す。
彼が奮発して買ってきたデザートを、彼女は別腹の空虚を満たすために食す。
これでカップルの仲が破綻しないのは<山羊さん郵便>の原理のおかげで、
つまり「食えるだけでもありがたや、腹に入ればみな同じ」なのですね。

人間も手紙が食べれれば、もっと世界は平和になるのではないでしょうか。