human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

スパゲティ本のこと

スパゲティー小説というのは僕の造語で、スパゲティーをゆでながら読むのに適した小説という意味である。もちろん見下して言っているわけではなくて、スパゲティーをゆでながらもつい手にとってしまう小説と解釈していただきたい。
「読書用飛行機」(村上春樹安西水丸『村上朝日堂の逆襲』)

実は今日、部屋で立ちながら読書するというのをやりました。
初めてではないはずですが、意識してやったのは今まで数えるほどしかありません。
西日のさす部屋が暑くて、台所にスツールを置いて座って読んでいたのですが、
姿勢を変えるバリエーションが少ないと思ううち、自然と立って読んでいました。

その時ちょうど読んでいたのが引用したエッセイ本で、
ちょうどその引用箇所を読んでいたわけではないのですが、
「あれ、立ってても読めるなあ」と思って少し考えて、上の引用箇所を思い出し、
「そうか、この本こそが”スパゲティ本”ではないか」と思い至った次第です。

家ではふつう、本はリラックスして読むものだと思います。
けれどそれは「リラックスすべきだから」そうするわけではありません。
立ち読みを習慣(「週慣」と書けば文字通りになります)とする自分にとって、
自分の部屋でも本を立って読むという発想は通常は湧いてこないものです。

上でさも珍しいことのように書いたのもそのためなのですが、
要はその成り行きに導いた要素が暑さや姿勢の問題だけでなく、
むしろ読んでいたエッセイ本がその影響として大きいのではと思ったのです。
確かに村上朝日堂シリーズは、明窓浄机に端座して読むような本ではない。

というわけで「部屋で立って読書してもいい」は自分には大きな発見なのです。
そして台所に立ちながら、片手間に読むのに適した本があるということも。
日常的に多分野の本を併読する僕のような人間にとって、
読む姿勢のバリエーションを増やすことはひとつ有効な手段である。

ちなみに僕はスパゲティをそれほど頻繁には食べません。
2日に一度は夕食に、という時期もありましたが、今は日曜の昼だけです。
なのでスパゲティ本と呼ぶのは自分にとってしっくりこないので、
「キッチン・ブック」とでも名付けておきましょうか。

なんだか料理本みたいですけど。