human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

香辛料の国 1-5

存在するものを共有できる人数は限られている。しかし、存在しないものを共有する人数には、限りがない。これは、その価値や重要性とは関係がない。ただそれが、存在するか、しないかの違いだけだ。 けれど、その「ないもの」を、あるように見せることができ…

桐野夏生とタカラヅカ

「姐さんは桐野夏生をご存知ですか。……ね、あの人の小説すごいですよね。重いというか、ズシッとくるというか。僕は『OUT』を最初に読んだんですけど、いや、食事中に話すのもアレなんですけど、死体を切り刻む描写にウッときて……そうそう、弁当屋の工場の。…

脳の新陳代謝、雲を食べること

『国境の南、太陽の西』(村上春樹)を読んでいて、ふと「脳と身体の新陳代謝」というキーワードが浮かんできました。 ある一つの場面に対して連想が始まって考え込み、しばらく立ち止まってから読む方に戻り、また別の場面で先の連想に対する反応がある(連…

香辛料の国 1-4

連想の契機、可能性の感覚。夢は叶うと色褪せるというが、これは夢を現実化する能力や資源に恵まれない者の負け惜しみではない。何かができる、自分は変われると思うのは、今の自分には手が届かないが、霞む視線の先に未知の色を見るからだ。 味や香の組み合…

香辛料の国 1-3

色の混じらない虹がある。五つの各色ははっきりと濃く、境界も明確で、五つの独自の主張となる。相手に見せるのはそのうち1つだけだが、その相手はこのこと、つまり「今目にしているのは五つのうちの1つだけ」であることを知っている。ふつうは2つ、持て…

香辛料のくに(1)

セージは言う、 「科学は幻想かもしれない」 クローブは言う、 「幻想は科学かもしれない」 フェンネルは問う、 現在は過去と未来を含めるのか、 変化と不変は視点の違いなのか、 空虚は充溢のための準備なのか、 コリアンダーは言う、 「小さな音に耳を澄ま…

"walking sincerity"、「行間のある会話」

一昨日に、高校の同級生と久しぶりに会って話をしました。 数年前の同窓会ではロクに立ち話もしませんでしたが、それ以前に在学中もこんなに長く話したことはなかったかもしれません。 聞けば彼女も独立して個人事業で生計を立てているという。 驚きはしたも…

「怒り」と「憤り」、あわよくば『VIVO!』(瀬川藤子)の書評

3巻まである『VIVO!』(瀬川藤子)をさっき読了しました。 何度目かの再読ではあるんですが、最終章を呼んでいるあいだに意外なところに連想がつながったので何か書こうと思いました。VIVO! 3巻作者: 瀬川藤子出版社/メーカー: ノース・スターズ・ピクチャ…