human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

露天風呂プチボルダー

また風邪を引きました。
たぶん風呂上がりに冷たい水(リンゴ酢をちょっと足したもの)やらを飲んでいたせいです。
水道水はもちろん凍る手前の冷たさで喉によくないんですが、「あ、大丈夫だ」と思うと量が増えて、同じく風呂上がりに飲む大豆飲料も以前は温めていたのに(喉越しがいいから)冷たいままで飲むようになって、それが行き過ぎたのだと思います。
すぐ治りそうな気配があったんですが、喉から始まった症状が鼻に長く残っていて治り切りません。
花粉症を疑ってアレグラを飲みましたがたぶんシーズンはまだ早い(シーズン前に目から症状が出始めるのが常ですが、それにもまだ早い。まだまだ日中氷点下の日が続きますからね)。

で、風邪を引くと、というか体調を崩すと日常的に酷使している部分が痛むのが常で、今回は股関節まわりが痛んでいます。
ボルダリングを始めた時から(入門書通りの)ストレッチは念入りにやっていて、お陰で開脚前屈などで以前の自分ではあり得ないほど柔らかくなっているのを日々実感しているのですが、その股関節まわりのストレッチ時に臀部や太腿背部の付根にかなり負担をかけるようで、風邪が完治手前の今は「そこ」が痛いです。
前屈する姿勢をとったり、高い足場に足をかけて踏ん張ったり(これはジムで登る時ですが)すると痛くて、つまり下半身を効果的に使って登る場面全般で痛む。
それでやる気が削がれて(腕だけで登りたくないので)、温泉で一休みすることにしました。

今回は温泉の効能重視なので、今日は山の神温泉・優香苑へ行きました。
3、4回目くらいになると思います。
夕方に日帰りで入館して、湯船(内湯・露天)に浸かったり出たりを繰り返して、さらに一度湯殿を出てフロアの椅子で休んで*1からまた入りました。

露天風呂では人がいない時に、湯を囲む岩を使って「外岩演習」をしていました。
もちろんボルダリングの話で、岩にしがみついて登るふりをするということなんですが、具体的には、ほとんどつかみどころがないようなまるっとした岩の凹凸を探って指がかかりそうな箇所を見つけて(右)手を引っ掛けて、同時に同じ岩の低い部分か湯船の中の岩で(左)足のかかとが引っかかる部分を探してかけて、手が外れないようにしながら足にヨイショと力を入れて次の(左)手を取りに行く、というムーブを試していました。
半分以上体が湯に浸かっているのでそう力がいらなかったり、足が裸足だったりで外岩(ボルダー)登攀と条件は違いますが、雰囲気はつかめたような気がします。

実際に本物の外岩を登るときはさぞ楽しかろうな、とまず思いました。
その楽しさについて言葉にするとすれば、まず「自然への身体運用の適応」と言ってみましょう。
岩の形状や表面状態はまさに自然で、人間がよじ登るために融通を利かせたなりをしているわけではありません。
その岩を、しかし登ろうとする人間は、いかに登りやすくできるかと、ルートを考え、また動き(手足を岩の表面にどう掛けるか、そして身体をどう持ち上げていくか)を考えます。

僕は温泉の岩の表面を手で撫でながら「スイートスポット」を探し当て、右手と左足(のヒール)で全身をしっかり固定できた時に、ある爽快さを感じました。
「自然との一体化」という言葉がまず浮かび、でも言いたいニュアンスと違うなと思って再考し、最終的には上記の表現が整っているかとは思ったんですが、それに行き着くまでに思いついたのが、いつも僕の念頭にある「ありもの」の思想。

岩は、おそらく人間の意図を越えて、すでにそこにある。
それは「ありもの」である。
ジムにある、登る為に誂えられた人工壁のホールドと決定的に違うのがこの点。
「登れるか登れないか」の見極めが最初にあるが、とにかくまずは、登れるものとしてオブザベーションを行う。
この姿勢は、原住民がジャングルを渉猟しながら、枯れ木や石ころを「なにかに使えるもの」として合切袋に放り込むのと、そう変わらない。
「ありもの」が目の前あって、要(かなめ)は、それをどう活かすかという人の工夫に委ねられている。
ブリコラージュ。

 × × ×

上の「スイートスポット」はたぶん使い方が間違っていますが、まあ文脈でわかると思うのでそのままにしておいて、それはさておき、「スイートスポット ボルダリング」で検索して、素朴な外岩登攀の動画を見つけたのではっつけておきます。
楽しそう。
www.youtube.com
この動画のあった記事↓には「瑞牆」とあり、瑞牆山というのが山梨県にあるようです。動画タイトルにもありますね。rocas.in
花巻市内では、大迫(おおはざま)にボルダースポットがある、と紫波オガールのクライミング用品店主から、二足目を買いに行った時に教えてもらいました。
雪が溶けて、さらに乾いてからやっと登れるようになるらしく、シーズンというか、店主夫妻が登りに行き始めるのは5月初旬だとのこと。
その時にまだここにいれば、ぜひついて行きたいとは思いますが。

*1:温泉へ行く前に借りた『物語とふしぎ』(河合隼雄)を読み始めました。今読中の最終巻『特性のない男Ⅵ』(ムージル)の前巻と共鳴する箇所があったのでまた別記事に書きましょう。