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本格的に本と関わっていきます。

都留氏とこれから読みたい本たち

市場には心がない―成長なくて改革をこそ

市場には心がない―成長なくて改革をこそ

図書館の経済の棚を見ていて、都留重人氏の本をみつけました。
都留氏は鶴見俊輔の伝記によく出てくる人で、戦前・戦中にアメリカで生活を共にした先輩という間柄だったと思います。
経済学の本を手に取ることは滅多にないのですが、著者名を見て、借りようと思いました。
内容はさておき、その人が見える風に読もう、と。

 × × ×

タイトルの感じ通り、社会に対する提言もいくらかありますが、それは強いものではない。
「ぼくはこう思うけど、みなさんはどうですか?」というやわらかい物腰。
当時の時事ニュース(小泉政権時)に、氏の経験(体験、読書)を対置させ、提言がでてくる。

「第七章 成長なくて改革をこそ」では経済学者や思想家の引用がいくつか並べられ、それらの内容が呼応し、また現代的な問題とも非常に深い関係をもっていて、この章を読んで、引用の原著を読んでみたいと思いました。
引用されている著者のメモをしておきます。

キーワード:
「労働の人間化」
「ゼロ成長(stationary)」
「生活の芸術化」
「『豊かさ』の貧困」
ジョーンズ効果*1
「レジャー国家」

ジョン・スチュアート・ミル(イギリスの古典的経済学者)
→"Principle of Political Economy"(1848)
○E・F・シュマッハー(ドイツの経済思想家)
→"Small is Beautiful"(1973)
○ジョン・ラスキン
ウィリアム・モリス*2
都留重人科学的ヒューマニズムを求めて*3
エズラ・J・ミシャン
→『経済学の神話性』(1986)
○クライヴ・ハミルトン(オーストラリアの経済・政治学者)
→『経済成長神話からの脱却』(邦訳,2004)
○ポール・ワクテル(心理学者、ニューヨーク市立大学教授)
→『「豊かさ」の貧困─消費社会を超えて』(邦訳,1985)
○ガバン・マコーマック(オーストラリアの歴史家)
→『空虚な楽園──戦後日本の再検討』(邦訳,1998)

今は講習で忙しいので、終わってから読むことになるでしょうか。

p.s.
最近読んだ内田樹氏のブログ記事↓も、都留氏の本と共鳴しているように感じました。
この「大風呂敷論考」は、図書館関係者にとって重要であると思い、機会があれば一緒に講習を受けている人にも一読を勧めています。
図書館はこういう考え方を姿勢として示せる、あるいは、もしこういう未来に日本(のある地域)が向かっていれば図書館において「それ」が可視化されるだろうからです。

日本はこれからどこへ行くのか (内田樹の研究室)

*1:「市民の福祉は、なかんずく他人との相対関係における市場財に対する彼の支配力に依存する」という動機付け──これは「ジョーンズ家に遅れをとらない」と表現されることから「ジョーンズ効果」と呼ばれる(p.142、太字は引用書では傍点)

*2:ラスキンのこの「労働の人間化」という考え方に呼応したのが、彼の盟友ウィリアム・モリスの唱えた『生活の芸術化』という発想であって、」(p.141)
鶴見氏の『限界芸術論』でモリスの名を知りましたが、『限界芸術論』のタイトルの意味は「芸術に限りなく近接した生活」で、まさにこの「生活の芸術化」についての本です。

*3:ラスキンやモリスの思想面での貢献にかんして」(p.183)書かれた論考が載っているようです。