human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

無題9

「疫病神みたいなもんだと思うんですが」
「悪い人?」
「いや、そうではなくて? いや、その、人って変わっていくもんでしょう」
「せやね」
「人と違うことをしたがる人ってのはある意味傾向そのもので、大勢で同じことやってる時に凝り固まるのをほぐす機能があるわけです」
「傾向そのもの? 傾向って、ものやっけ? ああ、光って見えるわけやな。照明はいらんと。存在照明ね、カッコええな君」
「あー、そのケイコウではなくてですね」
「ケイコウ灯マナー部(笑) ちゃんと勉強しいやー?」
「……。人が変っていくのは人間の傾向で、でも集団でいるとそれを忘れる。僕みたいな人はそういう時のリマインダ機能であって、集団を一人の人間だと考えれば僕個人は傾向なわけです」
「ふんふん」
「でも傾向は性質であって人ではないから、そういう人は個人としては破綻しているのです。自分で自分がわからないとか、落ち着かないけどそれでもいいのかもしれないとか思う」
「ああ、せやからいらんことばっか考えとるわけやな」
「落ち着いてしまうと変わらなくなってしまうという不安があって」
「せやけどずっと変わってくっつのも、変わらんことと変わらへんのとちゃうの?」
「マンネリ化すればそうなりますね」
「んーとな。要するに顔デカいっちゅうことや、君」
「…まあ顔にも脳は含まれますけど。あれ、いやほんとかな」
「期待を裏切らんビトレイヤやで、ほんま」