human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

段ボール刀のこと

まえおき

本記事は、前にジャムの話の中でした、習慣の話の1つです。

僕は自身の生活においてブリコルールの実践を信条としています。
ブリコラージュとは器用仕事の意味で、平たく言えば「ありものでなんとかする」。
根本的なことをいえば、自分の身体も、思考のベースも「ありもの」です。
ブリコラージュの実践とは、生きることそのものでもあります。

まずは実物を拝見

タイトルの「段ボール刀」とは、いかなるものか?
そもそもは紛れもなくただの段ボールだったのですが、
今日思いがけなく進化を遂げたのでお披露目の運びとなりました。
まずは実物をご覧下さい。
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段ボール刀はいかにして作られたか?

大層な書き方ですが、まず劇的な話ではありません。
最初に「習慣の話」と指摘したのは、こういうことです。
日々の生活における小さな変化に目を留め、生じた流れを観測し、
流れに乗り続けるうちに、ある地点に到達した。

スタートもゴールもなく、あるのは途中経過の中継点だけ。
でも、目的の存在によって行為が映えることには疑いはない。
だから目線を変えれば、中継点はスタートにもゴールにもなる。
儀式は、中継点をそれと認識する一つの方法である。

ということで、これは儀式なのだと思います。どうでもいいですね。

段ボール刀はいか(以下略

井上雄彦の『バガボンド』を、去年のいつからか、ずっと読んでいます。
週末にブックオフでちびちび立ち読みしているので、とても遅いです。
けれど間をあけて長々と読み続ける効果が、一気読みとは別にあります。
日々の生活の中に、遅読しているマンガの価値観が浸透してくるのです。

今はたぶん、35巻あたりを読んでいたはずです。
こんな読み方なので、何巻のどこがどうという話はできません。
けれど、『バガボンド』が自分の生活に与えた影響の話はできます。
本記事はその一部を語ることになるはずです。

そう、その前に一つ書いておきたかったことを先に言います。
バガボンド』は、座って読むより立って読む方が「入れる」と思います。
斬り合いのシーンに限らず、マンガ全体で登場人物の身体が激しく動きます。
ウデと頭がブレなければ、走りながら読むともっといいかもしれません。

さすがにそれは無茶ですが。

やっと本題

バガボンド』の武蔵は、多くの相手と斬り合う中で思索を深めていきます。
人を斬ることではなく、剣を振ることの意味について。
そして意識が自分の身体の動きに届きます。
かつて無意識にできていたことを意識し、それをまた、意識せずにするには。

武蔵が剣を振る描写にじっくり見入ります。
何シーンかで連続する動きがあり、それらを順番に、何度も見入る。
すると、シーンの隙間を、想像の中で埋めることができる。
静止画が動画になり、頭の中で再生される動画は自分の身体で繰り返される。

そんな読み方をしていると、実際に剣を振りたくなる。
内田樹のブログを日頃から読んでもいるので、必然的にそうなる。
剣道というよりは、杖道居合道の方だよな。
漠然とした興味が、そのようにして日常の隙間で芽吹いてくる。

しかし、自分から大きな変化を起こすかといえば、起こさない。

そうやって日々は過ぎ、たしか今年の春だったか、ソファを購入しました。
IKEAで完成品を買ったので頑丈に梱包されて配送されてきました。
エレベータに入らなかったり玄関で詰まったりのハプニングはまあ別の話で、
這々の体で搬入が済み、部屋で梱包を解いていると、異質な段ボールが一つ。

断面がL字の棒状の段ボールで、普通の段ボールよりやけに固い。
軽いのだけど、振っても全くしならないので、珍しいなあと思う。
捨てるのは惜しいし、何かに使えないだろうか。
木刀のようにそれを振っている手を、はたと止める。

そうだ、これを剣として振ろう。

こうして、梱包用の段ボールが素振り用の剣となったのでした。
似たような経緯で部屋で一本歯下駄を履いてもいるので、
組合せて「台所で下駄を履きながら素振り」という仕儀に相成り申した。
これがまた面白い。

その詳細は別の記事に譲るとして…

進化?

春先から毎晩のように段ボールを振り続け、梅雨に入る。
湿度が上がり、また気温が上がれば汗もかく。
すると水分に弱い段ボールはやわらかくなってくる。
振るとしなる剣というのは、あまり気持ちのよいものではない。

一度限界が来て段ボールの他端に持ち替えたが、先は見えている。
寿命が来る前に対策を打たねばなるまいと思う。
ブリコルールとして、意識は自然と修繕へ向う。
しかし何とも見事にL字だなあ。

というわけで段ボールの寸法を測り、ホームセンターへ。
アングルかなあと見当をつけていて、丁度良いものを見つける。
固定の仕方をその場で考え、ちょっと追加して購入。
そして帰宅して組み立てたのがついさっきの話であります。

作業としては、段ボールにネジ用の穴を開けて、
2つのアングルで挟んでネジとナットで挟むだけ。
ネジを留める位置を長い方のアングルの真ん中にくるようにしたら、
意図せずして、短い方のアングルが刀の鍔のようになった。

アングルのおかげで本体重量がかなりアップし、
けれど刀の先端は段ボールのままなのでモノにやさしい。
なにしろ台所で振り回すのでこれまで何度も壁や天井に打ち当てている。
木刀を振り回した日にゃ総務に怒られて修繕費を請求される羽目になる。

話を戻して、何が進化かといえばカッコ良くなったというただそれだけ。
もともとがもともとだけに、やっと形が機能に近づいたといったところ。
まあ、これでもうしばらく遊ぶことができます。
へへへ。
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