human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

愛について

 あの時、ぼくは彼女のいう愛をこう解釈したのだった。
 最も愛し合う二人は浮気をし続けなければならない。愛を二人だけで交換するのではなく、お互いに外に向って、無数の愛をばらまく。それでいて、二人は強い絆で結ばれている。たぶん、この解釈は間違っていないだろう。
島田雅彦夢使い レンタルチャイルドの新二都物語

愛とはまず、形式的なものです。
といって有形のものではないので、精神的かつ形式的なもの。
つまり、本質は中味にはない。

愛のあるところには、相手がいます。
その相手と、ある同じ形式を共有していること。
正確には、共有しているとお互いが思い込めること。

その形式が突飛で、非現実であるほど、他者の入り込む余地はなくなります。
突飛、あるいは非現実という価値観は、他者の、外の論理です。
突飛、あるいは非現実であること自体は、愛の成立には関係ありません。

愛のあるところには相手がいますが、相手のいないところに愛はありません。
愛は、相手に含まれています。
文字通り。

そしてそれゆえ、愛は求めるものではありません。
相手を求めれば、その中に愛があるかもしれない。
あるいは、あるのは哀かもしれないが、それも愛。

少なくとも「世の中」に愛はありません。
相手とは、ずっと具体的なものです。
そして愛ほど、抽象的なものはない。

あるいは、抽象的なものは、愛かも。