human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

-小説的思考

香辛料の国 1-6

文字のない本。ページを開けば広がるのは白紙ばかり、ではない。我々は紙の上のそれを、普通の本と同様に読むことができる。ただそれは、文字ではない。たとえば僕が、それを見る。読む。その本のあるページは、すると僕に問いかけてくる。僕はその本に対す…

香辛料の国 1-1

透明の理想。感覚に夾雑物がなく、思考が研ぎ澄まされた状態。圏外から流入する全てを許し、境界の内側から生み出される全てを受け入れる。生きていること以外に興味がなく、すなわち生命の存続に拘りがない。混じり合い、溶解し、呑み込まれ、分解される。…

香辛料の国 1-5

存在するものを共有できる人数は限られている。しかし、存在しないものを共有する人数には、限りがない。これは、その価値や重要性とは関係がない。ただそれが、存在するか、しないかの違いだけだ。 けれど、その「ないもの」を、あるように見せることができ…

香辛料の国 1-4

連想の契機、可能性の感覚。夢は叶うと色褪せるというが、これは夢を現実化する能力や資源に恵まれない者の負け惜しみではない。何かができる、自分は変われると思うのは、今の自分には手が届かないが、霞む視線の先に未知の色を見るからだ。 味や香の組み合…

香辛料の国 1-3

色の混じらない虹がある。五つの各色ははっきりと濃く、境界も明確で、五つの独自の主張となる。相手に見せるのはそのうち1つだけだが、その相手はこのこと、つまり「今目にしているのは五つのうちの1つだけ」であることを知っている。ふつうは2つ、持て…