human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

 -橋本治

多義語滾りて御座候

再び、沼りました。 「無人島に一冊」はもうこの本で。 と、まだ読中(でももう終盤)の今なら思える。「読中の今なら」というのは、 思考が滾(たぎ)るのは橋本治の本を読む間が最高潮であって、 自慢でもなく単純に経験則として言えるのですが、 こんな文章…

「もののあはれ」とは喜怒哀楽が等価であること

相変わらず、家での読書は『小林秀雄の恵み』(橋本治)の「沼」に嵌ってます。今回はスタートが遅すぎる(本記事を書き始めた今はもう寝る時間)ので、 とにかくシンプルに思いついたことを書き殴り、たい。 (でも一つひとつ展開してったらかるく1万字は…

近世→近代→現代(今)→現世(未来)

オフィスの鎖書在庫棚が何度目かであふれてきたので、 棚の増設ではなく古い在庫を段ボールにしまうという作業を先日始めました。そのうち、「出品したけど読み直したい本」が一つあるのを見つけて、 というのは棚にはその本のかわりに同サイズの木材を立て…

ドーマル、多和田葉子、橋本治と「メタファーの力」

ルネ・ドーマル『類推の山』を、その本編を読み終えました。未完の遺稿というのが惜しいです。 何も知らずに、それからまだまだ続くはずの「……」で章が終えられた次の白紙のページに出会って、呆然となりました。 そして、 ただ、それはもう、そういうものな…

ゆくとしくるとし '20→'21 1

一年を振り返るというとき、 今年は社会的にはコロナ問題で埋め尽くされていましたが、 僕自身はその影響を直接受けたというよりは、 そのニュースに触れて考えさせられることがとても多かった。 だから、書くならそういう話になる。というより、今年書いて…

愚かさと愛、ねじれ、ちいさな問題

『戦中派不戦日記』(山田風太郎)を読了。 橋本治氏の解説から2つ抜粋しておく。 太字は本文中傍点部。 昭和十七年の春は、こうして軍需工場で働きながら医学校進学を目指すことになる。受験勉強は全くしていない。医者になるということは、一人で飛び出し…

「土着の玄人」の安定感

二人の言うことは同じではありませんが、 共通のなにかを見ることができます、 ということの中身について書きます。ハシモト氏の文章には説明がいらないほど克明かつ大胆なので、 氏の文章の他との関連を見出せた時には、 その「関連先」を理解する大きな手…

非現実の非所有

これほどの長編(全6巻)を本腰を入れて読むのは始めてですが、 同じテーマが繰り返し現れる時に、 「それが長編であること」の効果を感じています。一つ目の引用の章タイトルがないのは本を返却していて手元にないからで、 ではなぜ引用ができるのかといえ…

「意識を伴う生態系」について

調和 、あるいは、 秩序 について。あるいは、 生態系 について。具体的には、 一人の中の生態系 について。 × × × 「下手な本を読むと体を壊す」──このことから敷延[ママ]して、「悪い影響力を批判なしに受け入れていると、いつか"しゃべる"という機能に障…

梨木香歩と橋本治と「物語」

以前に「併読リンク*1」というタグを作って、 そういうタグを作ったからこのテーマが書きにくくなった、 ということについて書きましたが、 その理由を「"併読リンク"という現象が自然発火的でなくなる」と書いて、 それはそうかもしれないがそれは根本原因…

一億総「ナカタさん」説

4ヶ月くらい前から再読している『海辺のカフカ』(村上春樹)がまだ読中で、そんな中久しぶりに自分が昔書いた書評もどきを読んでいて閃いたのでその内容をタイトルに込めました。カフカを読みながら「今の僕ってナカタさんみたいだなあ」と思っていたんです…

この書を持ちて、その町を捨てよ/「生活読書」

cheechoff.hatenadiary.jp 前↑の記事で寺山修司がひょっこり出てきたのは、橋本治の小論集『夏日』を同時に読んでいたからです。 下に引用した小論の初出は93年、『新・書を捨てよ、町へ出よう』のたぶん解説文です。 この本は文庫で持っていたんですが(た…

昇華班活動事例研究

今日の本題です。前段やら話のつながりを意識し過ぎると書きたいことにたどり着けなさそうなので、 飛躍御免(お、いい言葉だ)でさらさら書いていこうと思います。 × × ×橋本治氏は「活字の鉄人」と言われるくらいすごいのですが、 それは著書の多岐にわた…

直感と連想、個の中の普遍について

今日から『直感力』(羽生善治)を読み始めました。 つまり、直感とは、論理的思考が瞬時に行われるようなものだというのだ。 勝負の場面では、時間的な猶予があまりない。論理的な思考を構築していたのでは時間がかかりすぎる。そこで思考の過程を事細かく…

記憶の浮上を待つこと

『子どもが子どもだったころ』(毛利子来・橋本治)を読了しました。 自分が読んだのは↓ではなく単行本の方ですが。子どもが子どもだったころ (集英社文庫)作者: 毛利子来,橋本治出版社/メーカー: 集英社発売日: 2001/06メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 4…

橋本治の本とロマサガ3のこと

「平日和書」として『退屈な迷宮』(関川夏央)をおととい読了しました。 1月末に読み始め、2週間に5日のペースで読んで、意外に時間がかかりました。 読む前の印象と違って資料的な書物で、内容は南北朝鮮のルポや歴史の解説など。 日本が北朝鮮をもては…

現状認識から行動へ(1)〜必要と不安について

…最初は「必要」について考える記事のはずでした。何度も書くと言いながら投稿するのをためらっていたテーマです。 僕自身関心がとても高いテーマなのですが、考えを進めるうちに、 進んでいたはずがいつの間にか立ち止まり、後ろ向きに縮こまってしまう。 …

農業と「普通の農産物」について

農業新聞の影響かもしれませんが、ここ最近は農業の記述に反応します。 諺に曰く。「農夫が勘定したら、種を撒かなくなる」。おそらくは、労働とその生産物との関係は、本当に知られていないのではなく、社会的に抑圧されているのだと理解しなくてはなるまい…

「プランBのない"現代"」について

本記事は長いです。これまでで最長で、引用合わせて約4000字。 自民党が参議院選挙で大敗して、安倍晋三が「辞めない」と言い出したら、作詞家の阿久悠さんが死んでしまった。なんだか「じんわりと来るショック」だった。「ああそうか、”現代の日本語”は、一…

色気の起源について

ハシモト本シリーズ前回と同じ章からの抜粋です。 たとえば、百姓がいくら米を作っても悪代官がみんな年貢として持って行ってしまう、だからといって、百姓が米を作るのをやめるわけにはいかない。年貢として持ってかれても平気でいられる量の米を生産しちゃ…

色気について

”色気”と”媚び”を、一緒にしない方がいいと思う。”媚び”とは、失敗した色気だからである。(…) 「色気がなくてもかまわない」、あるいは「色気ってなに?」とやってる女性は、大方のところ、”色気”と”媚び”を混同しているのである。 というわけで「色気とは…

「関係を見る」ことについて

私は、かなり変わった男だ。普通の男は、自分の母親の着物を見立てたり、自分の祖母にセーターを編んでやったりなんかしない。自分の母親と祖母のいさかいを、「着物買ってやろうか?」と言って中和したりもしない。私がなにを言いたいのかというと、「要は…

「女性的」な魅力について

女がどうして、自分とは異質な同性の存在を認めながらも、その内面に深く立ち入ってものを考えたりしないのかということの根本は、これだと思う。「考えたってしょうがない」と。 なぜ「考えたってしょうがない」のかというと、まともな女が、”安定した自分”…

健康的な体調不良について

女が社会に進出するようになって以来、あきらかに、「病気ではないが体調が悪い」状態に対処する「東洋」(の医学)が市民権を獲得した。つまり、男の社会の中で、女はあきらかに「体調を崩す」のである。 男は、「健康」という精神論だけで生きている。ここ…