human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

 -村上春樹

「羊を持たない羊飼い」が最初にすること

自閉症的な社会では、それへの適応が自閉症的性質を亢進させる。 社会からの孤立(距離をおくこと)と全体性(ゲシュタルト性)の維持に相関がある、 という視点は、社会から一度も出ることがなければ、論理矛盾として斥ける以外にない。 × × ×引き続き、「…

マクラナマクラマクナマラ

ニュークリア・エイジ (文春文庫)作者:ティム オブライエン発売日: 1994/05/10メディア: 文庫 (22)ロバート・マクナマラ──Robert McNamara ケネディ=ジョンソン政権におけるエリート高級官僚、いわゆる「ベスト・アンド・ブライテスト(アメリカ最高・最良…

青豆とピーナッツ

『遠い太鼓』(村上春樹)をひさしぶりに再読し始めました。 一度目に読んだ時に書き込みがあって、初読は9年前だったようです。 つい最近オフィスで選書中にふと連想したのがきっかけなのですが、 他のきっかけが多すぎて、家にいるとそれが具体的に何だっ…

現実のふり、の現実、のふり、の…

だいたい、パパがお話をしてくれるのは、寝る前だ。パパはこんな具合に始める。 「さて、もう寝る時間だ。その前に、ひとつ、お話をしよう。ききたいかい?」パパはいった。 パパは、ぼくにお話してくれる前に、かならず「ききたいかい?」という。「どうし…

子どもに「かまう」人の視線と秩序

「でも子供を可愛がるというのとは、ちょっと違うんです。なんと言えばいいんだろう? 子供にかまう、という方が近いかな」 かまう? 「うちにも子供がいるんですが、犬伏はとにかくかまうんです。子供が好きなことはたしかなんだけど、可愛がるというのとは…

香辛寮の人々 2-1 「脳の中の博物館」

時が離散的に流れている。自分の周りを現れては消える事物が、移動ではなく、点滅しているようだ。日の光が、雨の細やかな粒が、チャンネルを切り替えるように明滅する。昼と夜の違いが、左右の違いでしかない。左右とはつまり、決まりごとのことだ。一方で…

電車の中で小説を読むと起こること

村上春樹の作品はいつも何かしらを読んでいます。 併読書がたくさんあって、それらの読むスピードはまちまちですが、その中でちまちま読むものの中にハルキ小説が混ざっている、という感じです。 一つ前が『1Q84』だったか(完読できませんでした)、その後…

「砂漠だけが生きている」、生と死のフラクタル

彼女は、すべてを見られる。世界中のどこにでも目を持っている。地理的にも歴史的にも、すべてを見てきた。人間のやることを、全部知っている。 無限ともいえる知性、あるいは思考は、どこへ行き着くのか。壮大な実験を人間はスタートさせて、そのまま忘れて…

家の葬式、曲の葬送

──「家の葬式」のことを、前にちらりとおっしゃっていましたよね。 ──はい。我々建築家は、家を新しく建てる場面に比べて、家を解体撤去する場面に立ち会うことが圧倒的に少ないのです。近頃はリフォームやリノベーションが流行しておりますが、世間の建築家…

脳の新陳代謝、雲を食べること

『国境の南、太陽の西』(村上春樹)を読んでいて、ふと「脳と身体の新陳代謝」というキーワードが浮かんできました。 ある一つの場面に対して連想が始まって考え込み、しばらく立ち止まってから読む方に戻り、また別の場面で先の連想に対する反応がある(連…

悪なす善人、名刺を作って思うこと

半年以上かかっていた『1Q84』は結局、岩手から引っ越す時期の慌ただしさに巻き込まれてbook3前半で途絶し(そして引越し時に半分の蔵書とともに手放した)、なにはともあれ騎士団長への道が一歩前進、次は「多崎つくる」かと思って本棚を眺めると、訳書でな…

「あれは想像です」、TVピープル、道路地図

土曜日の昼過ぎに呼び鈴が鳴る。 戸を開けると佇む女性。 日蓮宗の分派の勧誘。 歴史の遺物だと思っていたが。「キリスト教の、あの…シト…」 「ああ、エホバのことですか?」 「そうです。あれに比べると、規模は小さいようですね」 「あれは想像ですから」…

灯台守の無名性について

灯台守、センチネル、ゲートキーパ。 これも非常に興味のあるテーマです。 鳥検番はペラル山脈にあるシシナン山のふもとに住んでいた。鳥はそのペラル山脈を越えてやってくる。鳥検番は、そういう鳥を動かし、気象を左右する力があると言われ、町の人々から…

道徳の動特性、夢の責任 ─ ある関係の始終についての演繹的思考 (2)

それゆえ、これを認識すれば、もはや道徳の規範を固定した不動の規則とはみなさず、その更新のために働くことを絶えず人間に要求する動的な均衡とみなすようになる。無意識に獲得される反復の傾向を個人の性格のせいにして、その性格に反復の責任を取らせた…

カーヴァー詩集『水と水とが出会うところ』

読了しました。 音読しました。 何度もかけて。 噛み締めるように。お気に入りのタイトルをメモしておきます。 今の僕の感覚に、なぜだかわからないがぴったり合うもの。今だけの出会い。 今だけの記憶。 記憶にはけっしてなり得ない記憶。「パイプ」 「電波…

星野青年と大島さんの対話より

それそのものではなく、 それがもたらしたものごとに目を向ける。 それとともにある時も、 それがそばにはいない時も、 それとの出会いをことほぎながら、 変わり続けるために。 「じゃあひとつ訊きたいんだけどさ、音楽には人を変えてしまう力ってのがある…

一億総「ナカタさん」説

4ヶ月くらい前から再読している『海辺のカフカ』(村上春樹)がまだ読中で、そんな中久しぶりに自分が昔書いた書評もどきを読んでいて閃いたのでその内容をタイトルに込めました。カフカを読みながら「今の僕ってナカタさんみたいだなあ」と思っていたんです…

ふたたび "Keeping Things Whole" について

『犬の人生』(マーク・ストランド)を数年前に単行本で購入して読みましたが、近所の図書館に新書判(「村上春樹 翻訳ライブラリー」)で見つけたので、あらためて借りて読みました。この本でいちばん記憶に残っているのはハルキ氏のあとがきに引用されてい…

無題10

「欲しいものが欲しい、って昔ありましたよね」 「おっ、シゲやんか。古いな。君いくつやっけ?」 「なんですかその運ちゃん仲間みたいな呼び方は」 「ばれたか」 「…それ、物欲が満たされたあとには欲望が独り歩きするってことですよね。そういう状況におい…

一本歯実践編2日目、鼻緒の調整法、弾み車を一定の速度で回すこと

昨日も一本歯ウォーキング実践編いってきました。往路)大文字山登山口(スタート)〜旧登山道〜山頂〜池ノ谷地蔵〜比叡平 復路)比叡平〜池ノ谷地蔵〜大文字山山頂〜火床〜登山口(ゴール)時間にして4時間ほど、休憩を5、6回しました。 ほんとうは比叡…

思考の再編成、賀茂川ウォーク、和歩の「歩き食べ」

昨日は午後からぐったりし始めて、けっきょく一日安静にしていました。一昨日の「府立図書館&Veloce行程」と「高野川ナイトウォーク」を組み合わて無理をしたのが原因かな、と常識的には思うんですが、もしかしてというか「そういう生活思想に今則っている」…

サイホン/タコの死にゆく道

「大きな月というのは、なにをどうやってもうまくいく、ついているということだ。かならずしも蓄積ではなく、相互に非常に異なるケース、コントラスト、正反対の色、あらゆる方角で一斉に響く和音、下から上へ、あるいは対角線に沿って社会をくぐりぬける、…

夢を見るために生きているのです/時間の死骸

だったか、「朝、目を覚ますのは夢を見るためです」という言い方だった気もしますが、 確か村上春樹がそんなことをエッセイに書いていました。 (本のタイトルだったかもしれません) × × ×「不変は死である」という考え方にはもともと親しいのですが、 turu…

空耳泡沫/立て板にミミズ

いつもの席。 カウンターの向かい、ガラスごしに外の明るさが見える二人がけの席。 今日も吉本隆明の『共同幻想論』を読んでいる。 今の時間帯は軽快なインストジャズが流れている。 (本当は逆で、その種のジャズが流れていることからおおまかな時間が把握…

テグジュペリ-吉本-村上ライン

ぼくは、自分の車室へ戻ってきた。ぼくは、ひとり言をもらした。彼らは、すこしも自分たちの運命に悩んでいはしない。いまもぼくを悩ますのは、慈悲心ではない。永久にたえず破れつづける傷口のために悲しもうというのではない。その傷口をもつ者は感じない…

「羊男」は羊かい? それとも羊飼い?

なぜ憎みあうのか? ぼくらは同じ地球によって運ばれる連帯責任者だ、同じ船の乗組員だ。新しい総合を生み出すために、各種の文化が対立することはいいことかもしれないが、これがおたがいに憎みあうにいたっては言語道断だ。 ぼくらを解放するには、おたが…

オガミドリさん、長女鰤子、三つむじ

『うずまき猫のみつけかた』(村上春樹)を読了しました。 雑誌掲載時から、「なごやかに絵日記風にやれるといいね」ということで、安西水丸さんのイノセント・アート風の絵と、うちの奥さんの素人スナップ写真をつけて発表されていました。写真は本の読者の…

教訓の主体的生成機能について

前にも「教訓」というテーマでがっしりとした話を書いた記憶がありますが(これ↓かな?)、 その前回とはおそらく違う結論が導かれるはずです。 cheechoff.hatenadiary.jp × × × 「あんな本を手にとって読む人がいたなんてなあ、信じられないよな」と詩人[…

「小カッコウ」の「カッコウ例」をいくつか

結局ケチなんじゃないかと言われそうだけれど、決してそういうのではない。生活の中に個人的な「小確幸」(小さいけれども、確かな幸福)を見出すためには、多かれ少なかれ自己規制みたいなものが必要とされる。たとえば我慢して激しく運動した後に飲むきり…

一(個)と全体(組織)について<併読リンク>

僕は学校を出て以来どこの組織にも属することなく一人でこつこつと生きて来たわけだけれど、その二十年ちょっとのあいだに身をもって学んだ事実がひとつだけある。それは「個人と組織が喧嘩をしたら、まず間違いなく組織のほうが勝つ」ということだ。(…)た…