human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

 -ロバート・ムージル

積極的消極主義

「先程きみは驚くほどはっきりと、ぼくのことを消極主義者だといったね。でも、それには二種類あるんだ。消極的消極主義、これはヴァルターのもので、それと積極的消極主義!」 「なんなのよ、積極的消極主義って?」と、クラリセは好奇心に駆られて尋ねた。…

コンポステーラの記憶、歩く必然

四国遍路の回想記↓は、序盤の山場手前で長らく更新が途絶えています。 司書講習が始まる前の、時間を少々持て余していた時期に書き始めたものです。 社会的立場は今もその時と変わりませんが、今はなかなかその時間が現れてきません。 大沢温泉(値段の安い…

限界芸術と「身の丈、ありもの生活」

『特性のない男』の三冊目を今日読み終えました。 どの巻も最後の章はとくに思索に富んでいるのですが、 三冊目終章の以下の箇所を読んでいて、鶴見俊輔氏の「限界芸術(論)」を連想しました。「限界」という単語がそうさせたのでしょうが、 この連想における…

非現実の非所有

これほどの長編(全6巻)を本腰を入れて読むのは始めてですが、 同じテーマが繰り返し現れる時に、 「それが長編であること」の効果を感じています。一つ目の引用の章タイトルがないのは本を返却していて手元にないからで、 ではなぜ引用ができるのかといえ…

連想の契機、四次元の意識空間

『博士、質問があります!』(森博嗣)に、SFのテーマで4次元の解説があって、 その中に「厚さ方向にだんだんと表情を変える金太郎飴」という例があります。 二次元空間にいる人(たとえば紙に描かれた人)が、 空間を通過するその金太郎飴を見ると、 たとえ…

感情における規則性の生命について

本記事もここ最近の投稿内容と関連します。 抜粋部(ウルリヒの発言です)から、 「壁と卵のメタファ」(@村上春樹)についてまず連想しました。 すなわち、システムと個人について。以下、話のスケールがかなり雑です。 「非常に多くの人たちが科学を非難…

moving motivation

抜粋を足がかりに、前の続きです。 象徴、役割、無名性、と、人間関係、それから、 肩書き(これについてはまた後で抜粋するかも)などについて。 余談、その三、あるいは、答え、その四──だから、歴史の道は、一度突かれると一定の軌道をとって進む玉突の玉…

道徳の動特性、夢の責任 ─ ある関係の始終についての演繹的思考 (2)

それゆえ、これを認識すれば、もはや道徳の規範を固定した不動の規則とはみなさず、その更新のために働くことを絶えず人間に要求する動的な均衡とみなすようになる。無意識に獲得される反復の傾向を個人の性格のせいにして、その性格に反復の責任を取らせた…

『特性のない男Ⅰ』を読んで (2)

前回の続きです。 だが興奮状態や興奮した行為の状態にあっても、彼の態度は情熱的であると同時に無関心だったのである。彼はかなりいろいろな経験をしてきたし、かならずしも自分には意味のないことでも、それが彼の行動意欲を刺戟さえすれば、いつでも身を…

『特性のない男Ⅰ』を読んで (1)

『ムージル著作集 特性のない男Ⅰ』を読了しました。 面白い。 引き続き第2巻も図書館で借りて読むつもりです。 以下、抜粋とコメント、下線と太字は引用者。ムージル著作集 第1巻 特性のない男 1作者: R.ムージル,Robert Musil,加藤二郎出版社/メーカー: 松…