human in book bouquet

読書を通じて「身体へ向かう思考」を展開していきます。

◆読書

鏡としての人工知能(森博嗣『血か、死か、無か?』を読んで)

『血か、死か、無か?』(森博嗣)を読了しました。 Wシリーズ第8作。血か、死か、無か? Is It Blood, Death or Null? (講談社タイガ)作者: 森博嗣出版社/メーカー: 講談社発売日: 2018/02/22メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を見るここへ来て、…

トラックのダッシュボードにイリイチがある世界(1)

『街場の現代思想』(内田樹)を、学生の頃に好んで読み返していました。 こういう仕事がしたい、という明確な像を持っていなかったし、そもそも仕事に対する強い意志もなかった時期、大学院生の頃でした。こんな極端なニュアンスではなかったと思いますが「…

エンパワーメントサラダとパウリング

昨日歯医者へ行って、虫歯の治療跡に金属の詰め物をしてきました。 予定では1週間で済むはずが、一度目は衛生士の型取りが失敗して(とはあちらは言いませんでしたが)歯と金属が合わず、けっきょく仮のゴムゴムした詰め物で昨日までの2週間を過ごしました。…

しずか【静か】、連想と鍛造

草の芽の伸びる音さえ聞き取れそうにあたりは静か。 湖面が小波一つないほど静か。 生気に満ちた音がすっかり掃き清められたように静か。 冬眠中のリスのように静か。 休日の病院が墓場のように静か。 風鈴のかすかな音さえ騒がしすぎるほど静か。 耳がなく…

「砂漠だけが生きている」、生と死のフラクタル

彼女は、すべてを見られる。世界中のどこにでも目を持っている。地理的にも歴史的にも、すべてを見てきた。人間のやることを、全部知っている。 無限ともいえる知性、あるいは思考は、どこへ行き着くのか。壮大な実験を人間はスタートさせて、そのまま忘れて…

「現在主義」と終末論、知と地と血

壮大なる「時の知(chronosophie)」、予言と時代区分の混合、(…)普遍史の言説は、絶えず歴史につきまとってきた。未来への問いから生まれた、このような構成物は、その前提事項と同様、千差万別で(それらは総体的に、循環的にしろ、直線的にしろ、展望な…

境界の連想、ものさしの忘却

『歴史の体制』(フランソワ・アルトーグ)という本を読み始めました。序章の終盤に「境界」という言葉が出てきて、なにかが繋がりました。 「この繋がり方には覚えがある」と思い、「岬」がタイトルに入った本を連想して、ブログ内で検索すると『境界領域へ…

非人称の明晰

当事者でない人々にとって、白黒をつけることはメリットであるに違いない。それは社会が好コントロール装置だからである。たとえば、ハンチントン病を発症する可能性のある人々に対して、生命保険会社はどのように対処すべきか、という問題を考えてみればよ…

半直線的人生、無人島レコード、媒介関数の発見

人間の人生が半永久的に長くなった今、人は現実というものをどう捉えて良いのか、迷っているように僕には思える。たとえば、数十年しか生きられないとわかっている人生ならば、自分ができることと、とてもできそうにないことがかなり明確に判別できただろう…

陸のない地球の話(序)

「陸のない地球の話をしよう」 「面白そうね。どんな話なのかしら?」 「僕らは海で生活をしている。海の中で、または海の上で。生活の具体的な描写は後々考えることにしよう」 「あら、私はそこが知りたいのだけれど。お父さんは船の上で釣りをして、今夜の…

mind magic multiplicity

Wシリーズ第2巻、読了しました。魔法の色を知っているか? What Color is the Magic? Wシリーズ (講談社タイガ)作者: 森博嗣出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/01/19メディア: Kindle版この商品を含むブログ (1件) を見るかつてなく…

reality stimulates vitality

リアリティ(現実性)について。 言葉の理解は、文脈を通じて現れる。 辞書的な意味の暗記ではなく、異なる様々な使用場面が複合的に頭に展開されることで「体得」される。「これはなかなかリアリティ溢れる小説だ」 「Sさん? ああ、あのタンクトップのリ…

Walking Margarine

Wシリーズ一作目、読了しました。彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? Wシリーズ (講談社タイガ)作者: 森博嗣出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/10/20メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る × × × 「逆に言えば、先生…

Fractal Apoptosis

因果関係は、幻想かもしれない。 「鶏と卵の関係」とは、互いに相関のある二つの事象に対して、原因と結果を割り振れない状況をいう。 その起源が深い籔に覆われた、不確定な現象。 僕らはそういったものに出会うと、片付かない気持ちになる。 不安、といっ…

Ouroboros Optimization

森博嗣のWシリーズを先日、図書館で借りて読み始めています(第一作の『彼女は一人で歩くのか?』)。 本が薄いなと思いましたが、無駄が排除されたシャープな印象を、Vシリーズ(これも先日から電車内用に『赤緑黒白』の再読を始めました。文庫版は表紙がオ…

石黒浩と森博嗣

『"糞袋"の内と外』(石黒浩)を読了しました。序盤を読みながら、何度か『人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか』(森博嗣)の内容を連想し、それもあって、この二人は似ているかもしれないと気付きました。 一度そう思い込むと不思議なも…

Physics Research with Quantum Purple 2/n

× × ×──初期のコンセプトとして、「身体と脳を仲良くさせる」というのがあったんです。養老孟司先生がいうように現代は脳化社会ですから、仕事をしていても、街に出ても家にいても、使うのは脳ばっかりですよね。身体は補助的な役割しかなくて、脳の制御を外…

Physics Research with Quantum Purple 1/n

「ダメだよ、そのスニーカー。ダメだってことは保証します」 なぜ、果物屋が自信ありげに他人のスニーカーを評するのか。 「ハズレですな、そいつは」 たしかに「現品限り四十%オフ。しかも箱なし」というのを買ってきたのだが、四十%オフになっていなかっ…

家の葬式、曲の葬送

──「家の葬式」のことを、前にちらりとおっしゃっていましたよね。 ──はい。我々建築家は、家を新しく建てる場面に比べて、家を解体撤去する場面に立ち会うことが圧倒的に少ないのです。近頃はリフォームやリノベーションが流行しておりますが、世間の建築家…

人間の定義、幽霊の希望

「君はいつだって、どこへだって行ける。でも……、ここへ来た目的は?」 「人間じゃない生きものを見たかった」 「ロイディは生きものじゃないよ」 「生きていないの?」目を見開いて、クロウ・スホはロイディを凝視した。「でも、話ができるし、歩いているわ…

思考の自由、意識と関係、その起源

誰もあなたに助言したり手助けしたりすることはできません、誰も。ただ一つの手段があるっきりです。自らの内へおはいりなさい。(…)もしもあなたが書くことを止められたら、死ななければならないかどうか、自分自身に告白して下さい。何よりもまず、あなた…

評価、身の丈、個性と抽象

『思想をつむぐ人たち』(鶴見俊輔著、黒川創編、河出文庫)を読了。 これで2回目だったか、3回目だったか。思想をつむぐ人たち ---鶴見俊輔コレクション1 (河出文庫)作者: 鶴見俊輔,黒川創出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2012/09/05メディア: 文庫…

悪なす善人、名刺を作って思うこと

半年以上かかっていた『1Q84』は結局、岩手から引っ越す時期の慌ただしさに巻き込まれてbook3前半で途絶し(そして引越し時に半分の蔵書とともに手放した)、なにはともあれ騎士団長への道が一歩前進、次は「多崎つくる」かと思って本棚を眺めると、訳書でな…

暑さと半死、それは修行なのかもしれない

暑いです。 こうまで暑いと、能動的になる意志が熱気に奪われる心地がします。意志は能動性の言い換えのようなもの。 先に受け身の出来事があっても同じで、意志がなければ受け続けるだけ。 「それはいやだ」という反逆が、人の意識の始まり。 だから「それ…

新しい仕事(0):本と自覚

仕事についてちゃんと考えておかなくてはと思い、その一方で直近にやる必要のあること(引っ越し準備など)が確定されてそちらに意識がとられていました。 やることが具体的なほど動きやすいけれど、抱えるタスクが具体的であるほど、それと同時に対面してい…

愚かさと愛、ねじれ、ちいさな問題

『戦中派不戦日記』(山田風太郎)を読了。 橋本治氏の解説から2つ抜粋しておく。 太字は本文中傍点部。 昭和十七年の春は、こうして軍需工場で働きながら医学校進学を目指すことになる。受験勉強は全くしていない。医者になるということは、一人で飛び出し…

『14歳のバベル』(暖あやこ)を読む

ちょっとした縁があり、『14歳のバベル』(暖あやこ)を読んだ。 SIMは途中からSF度が増してきたので魔法都市ゴドランド。 原曲はごちゃごちゃしているが、頭の中でBGMを流すので「実際」はシンプル。 以下、思ったことをちょっと書いてみます。 (SIM : S…

九条と自衛隊、思想のオーソドクシー、手続きのまっとうさ

『さようなら、ゴジラたち』の「戦後から遠く離れて」の章を読む。 憲法改正手続き法案が衆議院を通った頃の、憲法九条論。『九条どうでしょう』(内田樹ほか)は前に読んだ。 加藤氏はこの本所収の内田樹の主張にほぼ賛成している。 (以下、いろいろ混ざっ…

「あれは想像です」、TVピープル、道路地図

土曜日の昼過ぎに呼び鈴が鳴る。 戸を開けると佇む女性。 日蓮宗の分派の勧誘。 歴史の遺物だと思っていたが。「キリスト教の、あの…シト…」 「ああ、エホバのことですか?」 「そうです。あれに比べると、規模は小さいようですね」 「あれは想像ですから」…

身をやつす、苦労の「言い値買い」、Y.Kのこと

朝食時に『小説修業』(小島信夫、保坂和志)を読み始める。 ハシモト氏の「貧乏は正しい!」シリーズはこの後になりそう。週に一度の洗濯は朝起きて食器を洗う前に洗濯機のボタンを押す。 1時間の暖気なし乾燥「風乾燥」を含めて、朝食を終える前にブザーが…